ぶっくぶくの部屋

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何年か前に職場の旅行で別府・湯布院へ行った。
中日に自由行動があったので、かねてから行ってみたかった
豊後竹田へ。
お目当ては岡城址と滝廉太郎。
岡城址は噂に違わぬ山城の大遺構。
大汗かいてのぼってみると、滝廉太郎はたしかにここをイメージ
して「荒城の月」を作曲したのではないだろうか、と思った。
土井晩翠は青葉城をイメージしたのだろうけど…。
その豊後竹田にあったのが軍神広瀬武夫を祀る「広瀬神社」。

File No.82
『軍神広瀬武夫の生涯』高橋安美(新人物文庫 667円)
オススメ度★★☆☆☆

そんな豊後竹田の思い出もあったせいか、この本を本屋で見つけて
即座に買ってしまった。
もうひとつの理由は、帝国海軍士官広瀬武夫が当時の敵国ロシアに
駐在していた時、ロシア人たちからも愛された人柄だったことや、
あの「坂の上の雲」の主役の一人である天才参謀秋山真之と親友だった
ことなどから、この人物にひとかたならぬ興味があったこと。
読んでみると、広瀬武夫の祖父の時代から丹念に個人史をたどって
いる。まさに実直な郷土史家が書いたような趣きだ。
実直すぎるせいか、第2部なんかは史料引用が多く、関心薄い人は
ここらで放り出すかも知れない。
第2部のクライマックスは、武骨な武夫がロシア人女性のアリアズナ
とマリアから思いを寄せられながらもこたえることが出来ず、
帰朝命令により、はかなくも永久の別れをしてしまうところ。
切ないかぎりの話なのだが、ちょっと書き方が素っ気ない。
でも、よくぞ2人の女性を振り切ったものだ。
その理由たるや、「敵国ロシアの嫁さんを連れて帰ったら、まわり
から白眼視されて不幸にしてしまう」というもの。
男らしい!
真の男の愛情とはかくあるべし!
その言葉通り、日本は間もなく大国ロシアを相手に日露戦争に
突入し、武夫は最前線に駆り出される。
歴史にも有名な旅順口閉塞作戦に志願し、敵の砲弾が頭に直撃し、
肉片となって飛び散るという凄惨な戦死を遂げてしまう。
その壮絶な死と、勇猛果敢な「もののふ」の魂が伝説のように
語り継がれ、「軍神」と崇められるようになったのだろう。
その死後というエピローグも語り足りないような感じ。
くしくも、巻末の「解説」で評者がその食い足りなさを指摘している。
中世史の泰斗故林屋辰三郎は「歴史はエモーショナルでなきゃいかん」
と常々弟子たちに言ってたとか。
そう、やっぱり読み手をワクワクさせたり、アツくさせたりしなきゃね。
もちろん、誇張やハッタリ、捏造はいかんけど…。
この本も、オレ的には貴重な一冊だったんだけど、おススメするには
ちょっとなあ。
最後に、
この本の巻末に、
「本書の著者高橋安美氏の著作権継承者を探しております。
ご存知の方は編集部までお知らせ下さい。」
とあった。
へえ〜、こんなのはじめて見た。
この著者は大正元年生まれだそうだから、もうお亡くなりになって
いるんだろうか?跡目を継ぐような身寄りはいなかったのだろうか?
と本題とはあまり関係のないことに少しばかり思いをめぐらした。

2009.10.06:ycci:count(1,237):[メモ/コンテンツ]
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