ぶっくぶくの部屋

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昨年、松本仁一の『アフリカ・レポート』(岩波新書)を
読んで感銘を受けた。と言うより、殆ど知らなかったアフリカ
の実態をうかがい知り、オドロキも大きかった。
昨年読んだ新書の中ではベスト3に入る。
読むことを奨めた知人も相当面白かったらしい。
この松本が以前書いたものを合本したのがこの本。
読まないテはない。

File No.72
『アフリカを食べる アフリカで寝る』松本仁一(朝日文庫 1000円)
オススメ度★★★★☆

いやあ、『アフリカ・レポート』より面白いかもしれない、この本。
人間生活の基本中の基本である「食」と「寝」を通してアフリカを
見ているので、より身近で、具体的だからだろうか。
それとも、ジャーナリストらしい、簡明な文章だからだろうか。
(安っぽい修飾に陥りがちなオレも少しは見習わなくては…)
これは、1990年代中盤に書かれた『アフリカを食べる』と
『アフリカで寝る』を合本した2部構成になっている。
とくに後者は、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した秀品。
まず第一部の「食べる」の冒頭からビックリ、オドロキ。
ヤギの骨(骨髄)、牛の生き血、羽アリ、ミドリザル、バッタ、
いも虫、カメムシ、羊の目玉、ラクダ…等々、卒倒しそうな
ゲテもの食いが続く。
オレたちにとっては確かにゲテものかもしれないが、原住民は
それを当たり前の食料として口に入れている。
それを著者は偏見や先入観を持たずに積極的に楽しんでいる。
こういう姿勢を貫いているからこそ、この本が面白い。
でもカメムシぃ〜!?
あのすっごくクサいヤツだよお。
どうやって食べるか、読んでみてのお楽しみ。
これほどまでのものを口にしながら、著者が食あたりしたのは
1回だけ。チャドでいも虫のカラ揚げをひとつ食っただけで
3日寝込んだ。助かったのは抗生物質のおかげ。
しかし、いも虫そのものが悪かったんではなく、油が悪くなって
いたようで…。
第2部の「寝る」もスゴイぞお。
圧巻はケニヤのサバンナで、マサイ族と野宿するシーン。
ライオンなどの野獣の吠え声に怯えながらも、夜空が白くなる
ほどの星々の下で大地に寝るその心持ち。
ちょっと想像の域を超えるなあ〜。
日本で言う「満天の星」のさらに上をゆく星空なんてどんなん
だろう。
そうした日常生活の活写に垣間見えるのは、貧困・飢餓・内戦
などに象徴される政治の未成熟・腐敗である。
その一因が永年にわたる植民地支配にあるとし、人類が生まれ、
太古の昔から大きな潜在エネルギーに溢れたこのアフリカの
行く末を筆者は危惧している。
もうひとつ。
一口にアフリカと言っても、国によって政情・文化・生活・慣習・
風土・民族性などが大きく違うということが良くわかる。
久々の四つ★、オススメの一冊。
2009.08.29:ycci:count(924):[メモ/コンテンツ]
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