ぶっくぶくの部屋

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40歳を過ぎた頃から、過去より未来の方が短いことを
何となく意識し始める。
そのことを嘆き悲しむよりは、過去に積み重ねてきた
一見無意味・無駄に思えるような時間の重さを
しみじみと実感すべきとは思いながらも…。

File No.70
『終の住処』磯崎憲一郎(文芸春秋2009年9月号 790円)
オススメ度★★★☆☆

今年度上半期(第141回)芥川賞の受賞作品である。
今回は、著者が三井物産人事総務部次長という、現役バリバリの
サラリーマンであることに話題が集まっているようだ。
が、どっこい、作品自体もなかなかのもんだった。
この小説は「時」をテーマにしている。
結婚から50歳を過ぎるまでの約30年間を、「自分」と
「妻」を中心に、断片断続的に、少し抽象的に綴っている。
会話体や具体的ストーリー展開はあまりなく、少々わかりづらい
というか、よみづらい向きもあるが、「時間の積み重ねの重さ」
という感覚にはなぜか共感を覚えるものがあった。
「過去というのは、ただそれが過去であるというだけで、
どうしてこんなに遥かなのだろう」
というくだりにも、そのことが象徴されている。
無意味に思えたこと、あやまち、気恥ずかしさ、煩わしさ等々の
過去たちが妙に懐かしく、そのすべてを肯定していくという
静かな覚悟。
まさに中年の男ならではの境地だなあ。
でも、この小説のストーリーがいまいち腑に落ちない。
11年間も妻と没交渉で、久しぶりに話したことが、
「家を建てよう」って、なにそれ?
それと、「自分」ってどんな人間なのか、キャラが最後まで
よくわからないし、「妻」がなぜ新婚の時から不機嫌なままか
意味がわかんない。
なんにも、そういう設定でなくても、意は伝わるハズなのに、
って考えるのはオレだけかなあ…。
2009.08.24:ycci:count(769):[メモ/コンテンツ]
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