ぶっくぶくの部屋
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泣けなかった
新聞の下段に載っている新刊書の広告をよく見る
クセがついている。
この本の購入動機も新聞広告。
それと、先日A君から、
「石田衣良なんて読まないんですか?」と
ちょっと年寄り扱いされたのがシャクで読んじまった。
File No.67
『美丘』石田衣良(角川文庫 514円)
オススメ度★★☆☆☆
この本のジャケット、ちょっとエロくて、おっさんが
買うのにはちょっと抵抗があった。
勇気を出して買ったのに、寝床に腹ばいになって読んでいると、
家人がジャケットとオレの顔を交互に怪訝そうな横目でチラ見
するし…。
エロ小説じゃないゾ!純愛小説読んでんだ!って言いたい
けど、それもオレにはちょいと似合わない…。
で、この本がオレの初・衣良。
この作家の風貌と同じ、どこか遠くを見ているような
不思議な雰囲気を醸している。
物語は、きわめてシリアスで現実的なモチーフであるにも
かかわらず、そういうセンチメンタリズムを感じさせる。
かつては胸一杯に広がっていたそういう感性、ほとんど
忘れかけていた…。
この本を読んだ多くの人が号泣したそうだが、オレは
泣かなかった、いや、残念なことに泣けなかった、と
言うべきかもしれない。ちょっと寂しい…。
そう言えば、学生時代に「ラスト・コンサート」という
映画を観て大泣きした覚えがあるが、10数年後にもう
一度観たら、一粒の涙も出なかった。
感性は確実に退化している。
でも、こういうフレーズには、今でも心が動く。
「愛情なんて、別にむずかしいことではまったくない。
相手の最後まで、ただいっしょにいればそれでいい。
…ぼくたちはそれに気づかないから、いつまでも
自分が人を愛せる人間かどうか不安に感じるだけなのである」
これは、歳を経たおっさん、おばはんこそが、シミジミと
実感こめて頷けることなのかもしれない。
2009.08.10:
ycci
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