ぶっくぶくの部屋

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いやあ、まいりました。
30分以上もかけて渾身の読後感を書いて、「投稿」をクリックしたら、
あえなくログアウト。これで4回目。力が抜けてしまいます。
気を取り直して。

File No.49
『我、拗ね者として生涯を閉ず』本田靖春(講談社 2500円)
オススメ度★★★☆☆

「できるだけ厚く、できるだけ高い本を」というさもしい根性で図書館
から借りた本ですが、本田靖春という新聞記者にしてノンフィクション
作家の壮絶な「魂」に打ちのめされてしまったかのようです。
約600頁にも及ぶ長編ですが、読み終えるのが惜しい、と思わせる
本でもありました。
ちなみに、題名の「拗ね者」とは、「すねもの」と読みます。
「すねる」ってよくいいますよねえ。著者が自らを揶揄して付けたもの
でしょうが、米沢の「そんぴん」にも相通じるものがあります。
念のため、「そんぴん」は決してケナシ言葉ではない、と私は思ってます。
さて、この本は、本田靖春の出生から新聞記者時代までを自ら綴った
自叙伝です。
もっと続くハズでしたでしょうが、残念ながら病魔に襲われ、絶筆と
なってしまいました。
彼が、少年期から青年期に培った「正義感」は、天職とも言うべき
新聞記者となって花開きます。
中でも圧巻なのが「黄色い血キャンペーン」。
わが国は昭和30年代まで、血液の供給をほとんど売(買)血行為に
頼っていました。このことによって生じる社会問題に異議を感じた
著者は、大蔵省・厚生省、そして商業的血液銀行という「巨」に
対して、70数回にも及ぶキャンペーン記事の掲載と言う、敢然たる
挑戦をします。
結果、日赤による「献血運動」の広がりという新たなトビラが開き
ます。まさに「記者魂」の真骨頂。
しかし、この取材を通じ、自らも数度にわたる売血経験をしたため、
後年、肝臓がんに侵されてしまいます。著者自身はそれを「記念
メダルのようなもの」と言い放ちます。何と言ういさぎよさと覚悟。
思わず胸が熱くなってしまいました。
著者の人生は決して順風満帆ではありませんでした。
肝臓がんだけでなく、大腸がんや糖尿病による両足切断、脳梗塞など
後半生は次から次へと襲う病魔との闘いでした。
前妻は借金地獄のあげく、精神を病んでしまいます。
しかし、著者はそれらについて多くを語りません。
私事より、社会正義の方が大事であるという男らしさ!
この世への遺言ともいうべきこの本で、本田靖春はわれわれ現代を
生きる人間に、問いかけているのではないでしょうか。
「下の者・若者・弱者に対し、慈愛と寛容の心を持っているか?」
「上の者や強者に対し、いたずらに恐れおののいてはいないか?」
「悪や偽をただす勇気はあるか?」
「仕事に熱情を注いでいるか?」
と。

2009.05.17:ycci:count(812):[メモ/コンテンツ]
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