ぶっくぶくの部屋
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料理ひとすじの人生
村上信夫
この名前に聞き覚えのある方も多いでしょう。
そう、帝国ホテルの元総料理長にして、わが国におけるフランス
料理の第一人者として、斯界を引っ張ってきた人。
短躯肥満にして丸顔の独特の風貌と風体は存在感に満ち満ちていましたね。
File No.45
『帝国ホテル厨房物語』村上信夫(日本経済新聞社 1800円)
オススメ度★★☆☆☆
この連休はどこに行くアテもありませんでしたので、久しぶりに図書館に
行きました。けど、お目当ての本がなくてちょっとガッカリ。
リクエストも考えたのですが、こんなに本があるんだから、と書架の間を
歩きながらハズミで借りたのが、この本です。
わずか12歳で社会に出ざるを得なかった村上少年が、常にどん欲な
向上心を持ちながら修業を重ねた日々を、自ら日本経済新聞に「私の履歴書」
として綴ったものです。
なんだか、在りし日の村上シェフの問わず語りを厨房の隅で聞いているような
感じがします。
功成り名を遂げた人なんですが、決して自己顕示欲が強いわけではなく、
あくまでも謙虚です。
自分を育ててくれた先達や、チャンスを与えてくれた人たち、切磋琢磨した
同僚やライバル、志を引き継いでいる後輩たち、そしてお客様への感謝の
心を忘れない、一流と呼ばれる人には、そういう共通の「謙虚」さが
ありますよねえ。
村上氏は、「料理の極意は『愛情、工夫、真心』」と言ってます。
平凡に聞こえるかもしれませんが、達人が言うと深みを感じます。
また、自分の夢は、小さな町のレストランのオーナーシェフになること
だとも。
しかし、その夢は、帝国ホテルの「顔」となっていくことで、皮肉にも
かなえられなくなるのです。
そして、この本が上梓された3年後の2005年に村上氏は不帰の客と
なってしまいましたから、まさに、この世に残した遺言のようなもので
しょう。
ああ、それにしても、一度でいいから村上シェフの手になるフルコース
を食べてみたかったなあ、と思いますよ。
帝国ホテルのレストランで夜5万円だったといいますから高嶺の花では
ありますが、この本を読むと、5万円で味わう価値は充分あったように
思えます。
もうひとつ。
今をときめくシェフ三國清三も、帝国ホテルで鍋洗いの修業中に村上ムッシュ
に見込まれてスイスに派遣されたことが、飛躍のキッカケになったんです
って!
やっぱ、人間たるもの、どんな仕事でも、陰日なたなく誠実にやらなければ
何も道は拓けないのでありますナ。
2009.05.07:
ycci
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