ぶっくぶくの部屋

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企業小説とか経済小説とか言われるものを初めて読んだのは、
今から20年ほど前のこと。その初体験が、高杉良の『炎の
経営者』でした。いやあ、アツい作品で、その当時の私だったら
間違いなく4つ★でしたね。

File No.36
『暗愚なる覇者-小説・巨大生保-』上・下 高杉 良
(新潮文庫 各667円)
オススメ度 ★★☆☆☆

久々の高杉作品は、やはりアツいものでした。
上・下巻あわせて約1,000頁もの長編ですが、二日間で一気に
読んでしまいました。
内容は、巨大生保「大日生保」に勤めるエリートサラリーマン
吉岡周平が、経営トップの腐敗・堕落を徹底的に糾弾し、
組織のダイナミズム喪失と営業現場の士気低下に悩みながらも
奮闘する姿を描いています。
読む側も、サラリーマンと言えども男は外や内と闘わなければ
ならないと思う反面、現実はもっとおさまりよくいく力が働く
という思いも交錯します。
随所に出てくる日本の生保のレガシーシステム(セールスレディ
が保険を販売する旧来の営業方法)に限界が来ているという指摘や、
組織のダイナミズムやモチベーションを上げるのも下げるのも
経営トップのビジョンや求心性、人間性(倫理観)次第という
示唆に共感を覚えるのは私だけではないでしょう。
まあ、それだけ経営トップというのは重責なんですね、きっと。
この作品の不満な点…主人公が一体何回「辞める」を繰り返せば
気がすむのか。それだけ上部批判・組織批判をするならさっさと
辞めればいいものを。「黙して去る」ことこそ男らしいと私は
思うのですが…。
もうひとつ。作者的には鮮やかな結末なんでしょうが、私的には、
小説なんだからもっとスカッとする終わりにして欲しかったです。
みんな現実社会では苦しんだり、悩んだり、うまくいかなくて
モヤモヤしたりイライラしたりしてるんですから、せめて小説の
世界では「スカッ」としたいですよねえ。
でも、この作品は、いずれも現実にある企業や事件・状況を擬して
いるようなところがありますから、あまり奇想天外にもできなかった
んでしょうか…。
2009.04.13:ycci:count(811):[メモ/コンテンツ]
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