ぶっくぶくの部屋
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あのシュリーマンが日本に来てた!
あのシュリーマンと言ったって知らない人も多いでしょう。
19世紀のドイツ人で、ロシアで藍の商売をして得た巨万の富で
世界各国を旅したり、トロイア遺跡を発掘したりした人で、
その自伝的著書『古代への情熱』を読むと、まるでインディー・
ジョーンズの原型のようでもあります。
そのシュリーマンが、なんと幕末の日本にも来ていたのです。
File No.33
『シュリーマン旅行記 清国・日本』
H.シュリーマン著 石井和子訳(講談社学術文庫 800円)
オススメ度 ★★★☆☆
これはシュリーマンが1865年に、清国(今の中国)と日本を
旅した時の見聞録です。
当時の日本はまさに幕末。国際化へのトビラが徐々に開かれつつ
あったとは言え、まだ「江戸時代」の風が色濃く残る街や人や
風土・風習などを、作者は実に旺盛な好奇心で観察しています。
何と言ってもウレシイのは、当時の日本を客観的ながらも好意の
目で見ていることです。
「日本が世界でいちばん清潔な国民であることは異論の余地がない」
「日本には平和、行き渡った満足感、豊かさ、完璧な秩序、そして
世界のどの国にもましてよく耕された土地が見られる」
などなど、清潔・潔癖・質実な国民性にちょっと驚いている様子が
うかがえます。
きっと、文明と呼べるものは西洋にしかなく、未開の東洋にこんな
精神文化の高い国があるとは思っていなかったのでしょう。
「日本文明論」の章で作者は、物質文明は高いが、キリスト教的
精神文明は日本にはない、と書いてますが、滞在1カ月では、そこ
までだったのでしょう。
1年ぐらい滞在すれば、日本の精神文化をもう少し深く理解できたかも
知れません。
それにしても、下帯ひとつで全身に入墨をしている「苦力」や、
ごく自然な男女混浴の「公衆浴場」、ソデの下を絶対受け取らない
「役人」(武士)、高潔で慈愛に満ちた僧侶、などなど、幕末の頃の
日本の情景が彷彿としてきて興味が尽きません。
わずか140数年前のことですよ。今、50代以上の世代にとっては、
ひいおじいさん・ひいおばあさんぐらいの頃のことですから近い!
ですよねえ。
それと、もうひとつ興味を引くのは、日本の前に行った清国の印象が
良くないことです。当時の北京・上海は、街も相当汚く、多くの
国民が貧困で疲弊している様が描かれています。
これも、短期滞在ですから的をえているかどうかは良くわかりませんが。
いずれにしても、久々に「面白くて一気読み」した一冊です。
2009.04.04:
ycci
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