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「おくりびと」のルーツ
先日、映画「おくりびと」がアカデミー賞を受賞して、
日本もわが山形県も沸きましたねえ。
映画も連日満員、葬祭業の志望者急増という、ちょっとした
社会現象も引き起こしているようです。
が、そのルーツになったものは、きわめて精神性の高い一人の
人間のドキュメント?です。
File No.23
『納棺夫日記 増補改訂版』青木新門(文春文庫 467円)
オススメ度 ★★☆☆☆
私も少しミーハーなもんですから、オスカーをとった話題作を
観てみたいと思っているのですが、なかなか上映時間に行けなくて、
まだ観ていないのです。
それじゃあ、せめて本でも、と思い本屋さんに行ったら、この本と
そのものズバリ『おくりびと』(映画の原作?)のふたつがあり
ました。映画主演の本木雅弘が15年前に読んで感動したことが
「おくりびと」の誕生につながったという同書の方を迷わず買った
のですが…。
予想とはウラハラに、きわめて精神性の高い内容でした。
筆者は、大学を中退し、事業にも失敗、子どものミルク代にも
事欠く有様だった時、ふと目についた葬祭業の社員募集に
応募します。そこで直面したのは生身の死体と接する毎日。
否が応にも「生と死」を見つめ考えることとなります。
宗教的思索、詩的純化を重ねながら、筆者はある境地に達します。
「末期患者には、激励は酷で、慈悲は悲しい、説法も言葉も
いらない。きれいな青空のような瞳をした、すきとおった風のような
人が、側にいるだけでいい」
きっと納棺夫としてのエピソードを中心に構成されているんだろう
という予想は、みごとハズレました。
でも、映画を観た人も、まだ観ない人も、この本を読むことに
よって、「生と死」を改めて考える機会になり、結果、映画そのもの
もより深い「光」を放つのではないでしょうか。
(「光」が同書のキーワードのひとつでもあります)
この本が最初に出版されたのは1993年。15、6年後にこうして
日本のみならず世界の注目を浴びることになるとは思いもよらなかった
ことでしょう。
2009.03.15:
ycci
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