ぶっくぶくの部屋

ぶっくぶくの部屋
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浅田次郎には少し飽いていたのですが、たまに読むと
やっぱ面白い!物語を語らせると右に出る者はいませんね。
寝床の中、電車の中、日帰り入浴施設の大広間、女房の買い物
を待っている車の中、どんなところでも「アサダワールド」に
入ってしまいます。

File No.5
『草原からの使者 沙高樓綺譚』浅田次郎(徳間文庫 629円)
オススメ度 ★☆☆☆☆

この物語は、都会の真ん中のビルのペントハウスで、老若男女
紳士淑女が集い、いろんな人の「闇がたり」が繰り広げられる
という趣向です。
まさに、現代版『天切り松闇がたり』。
4編のオムニバスですが、中でも「終身名誉会員」は秀逸。
ストーリーは言えませんが、マイケル・ダグラス主演の映画
「ゲーム」のような面白さです。
『天切り松闇がたり』もそうですが、読んでいるうちに、
なんだか自分も作中の一人になって、耳をジーとかたむけて
いる感じになってきます。
「自分にもいつか素晴らしい奇跡が起きないかなあ」と常日頃
思っている人は、やっぱ浅田次郎にハマりますねえ。
かく言う私もその一人なんですが…、
ぜんぜん奇跡なんて起きる気配すらないし、正気にもどった
自分にあるのは、厳しすぎる現実の数々。
だから、★ひとつっ!(辛!)

いやあ、世の中、カン違いなサービスが
蔓延してますねえ。
バカ丁寧というか、間抜けというか、
マニュアルどおりというか…。
この本は、サービスの本質は何かという
ことを考えさせられます。

File No.4
『サービスの天才たち』野地秩嘉(新潮新書 680円)
オススメ度★★☆☆☆

床屋さん、高齢者集合住宅、キャディさん、写真屋さん、
マッサージ師、タクシーの運転手さん、そして、種牛?
というのが、この本の登場人物(牛?)。
正直言って、2章ぶんぐらい読んだら、や〜めよっかなあ
って思いました。
でも、温泉写真屋さんのところを読んで「ふ〜ん」、
マッサージ師を読んで「フム」、
最後の運転手さんを読んで、「フムフム、そういうこと
だよな、サービスって」と思っちゃいました。
つまり、自分の存在を相手に警戒させない、うざったく
させない、存在感を薄くする、ということも、サービス
の極意なんだなって思わせるんですね。
そう言えば、冒頭の床屋さんもそうでした。
「オレが…」「私が…」という1人称だけの目立ちたがり
屋が横行する中、
「あらゆる仕事、すべてのいい仕事の核には震える弱い
アンテナが隠されている」という言葉は意味深です。
私たちは、本当に震えるようなアンテナで相手の人間を
デリケートに捉えているのだろうか…?
と自分自身の大反省も込めて、あえて★ふたつ!


数年前の夏、弘前に行く機会がありまして…。
岩木山の裾野に広がるリンゴ畑の広大さに
見とれてしまいました。
その時は、このリンゴ農家の1人が人生を
賭すようなことをしていたとは知る由もなく…。

File No.3
『奇跡のリンゴ』石川拓治(幻冬舎 1300円)
オススメ度 ★★☆☆☆

これは、農薬も肥料も使わずに、リンゴをたわわに
実らせる、津軽のあるリンゴ農家の男の、余りにも
壮絶な挑戦の物語(ノンフィクション)です。
比較的富裕なリンゴ農家だった木村秋則。
しかし、ある日、「無農薬」に憑かれて、奈落の底、
極貧の生活に落ち込んでしまう。
キャバレーの客引きまでしたというから、その貧困
たるや推して知るべしです。
そして、ついには進退極まって、自殺未遂…。
その時、天啓が!
(この部分だけ、ちょっと出来すぎという感じが
しないでもないですが)
何だか、これからは気軽に「無農薬」なんて軽々しく
言えないなって感じです。それほど、この男の
「気狂い」はすさまじいものです。
「リンゴの木が、リンゴの木だけで生きられないよう
にな、人間もさ、一人で生きているわけではない」
木村秋則が語るこの言葉は重い!って感じました。
表紙の木村の破顔がまたいい!
★2つは少々辛すぎでしょうか?

あふっ、先週末以来、風邪治んなくて…。
こうも毎年風邪引くのは、多分「氣合」が入って
いないからかしら?
「気合」じゃなくて「氣合」と言えば、やっぱ、
この本でしょう!

File No.2
『甲子園への遺言』門田隆将(講談社文庫 648円)
オススメ度 ★★☆☆☆

年末に再放送したNHKドラマ「フルスイング」
見ました?感動しましたねえ。
さっそく私も原作買って読みました。
高畠導宏。
自らが高校時代から野球のスラッガーであり、また、
プロ野球のバッティングコーチとして、独自の打撃理論
とデータ、洞察力、愛情、情熱で数多くの名選手を育て
た人。彼の指導を受け、開花した選手は、落合、イチロー、
田口、小久保、アリアス…と枚挙にいとまがないほど。
この男のもっとスゴイところは、59歳にして新米高校
教師となり、甲子園での全国制覇を目指したこと。
「才能とは、最後まであきらめないこと」を身上とする
高畠の真骨頂!
でも、その夢は…。
こんな男がいたなんて、やっぱ世の中捨てたもんじゃあ
ないなあ。
「勇気がほしい」と思っている人にはピッタリかも。
絶賛のわりには★が少ないのは、ドラマの方が余りにも
劇的に脚色されすぎていたせいでしょう、たぶん。


ようこそ、「ぶっくぶくの部屋」へ。
「ぶっくぶく」とは、“ぶっく(本)”で“ふく(福)”の世界へ、という
ような思いつきで、深い意味はありません。ましてや、私がぶくぶくに太っ
ているからでも決してありません!まあ、読んで面白かった本をみんなに紹
介してみようというだけのことですので、気軽にお付き合いのほど。
ちなみに、すべて私の主観と独断(一部偏見?)ですので、あしからず。

File No.1
『食堂かたつむり』小川 糸(ポプラ社 1300)
オススメ度 ★★★☆☆

この本を読んでみようと思ったきっかけは、年末にさくらんぼテレビでやっ
ていた「山形元気大図鑑」をたまたま見たこと。著者の小川糸が山形県出身
者として登場していて、なんか不思議な雰囲気を発していたので…。
主人公のリンゴちゃんが恋人にふられて、故郷に帰り、「食堂かたつむり」
をやるお話し。正直言って、最初の数頁読んで、「ああ、オレの趣味じゃな
い」と思い、数日ほっぽっていました。でも、せっかく買ったんだからと思
い直して、少しいやいやながら読み進めてみたところ、なんと、中盤からが
ぜん面白くなって、しまいには、中年男として不覚にも鼻がツーンとしてし
まいました。
「料理は、自分以外の誰かが心を込めて作ってくれるから心と体の栄養にな
るのだ」というくだりは胸がジーンとしました。
そう、これは、料理を通じて、人を思いやるということをシンプルに教えて
くれる「大人の童話」なのです。
「最近、殺伐としているなあ」とか思っている人は、ぜひ読んでみてくださ
い。
そして、世の女性にも。女性たるしあわせ、母たるしあわせ、哀しみのひと
つの寓話かもしれません。

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