天地人

▼うっとうしい日々

梅雨空のうっとうしい日々が続いている。
カラダもココロも何だかパッとしない。
アタマがパッとしないのはもともとだけど…。

File No.348
『経営センスの論理』楠木 建(新潮新書 740円)
オススメ度★★★★☆

さぞやおカタイ経営学の本と思いきや、面白い。
それもそのはず、あのベストセラー『ストーリーとしての競争戦略』の
著者なのだからハズレはない。
とは言え、『ストーリーとしての…』はいち早く買ってもたものの、
まだ読んでいない。1年以上も本棚に突っ込みぱなし。
まさに「つんどく」の本領発揮。
でも、この本を読んだらガゼン読んでみる気になった。
それだけオモシロイ。
経営学の小難しい理論や言葉はあまり出てこない。
何だか気さくでオモロイ大学の先生の話を聴いているようなカンジ。

ここでも最後に出てきたゾ、ハーズバーグの「二要因理論」。
簡単に言うと、人間が仕事をするにあたって、「満足」に関わる要因と、
「不満足」に関わる要因とは別モノということ。
勤務条件や待遇などに根強い不満を持つ者は、仕事で満足を得ようとする
姿勢から最も遠いところにいる、ということ。
「ここでも…」というのは、先週、あの雇用のカリスマ・海老原嗣生さんの
講演でも同じことを言ってた。
いくら古典的でも基本は同じのようだ。

この本はきっと今年度の新書ベスト10に入るかもよ。
早目のご一読をおススメしたい。


File No.349
『何のために働くのか』寺島実郎(文春新書 750円)
オススメ度★★★★☆

商社調査部門のトップマネジメントにしてシンクタンクの代表、
そして大学の学長も兼ね、ニュース番組のコメンテーターとしても
大活躍中の寺島実郎サン。
実は、今ほど有名じゃなかった10数年前に直接お話しを伺う機会を得、
講演にも二度ほど来ていただいたことがある。
その重厚で論理的な話に聴き入ってしまったことを憶えている。

その寺島サンが何でこんなベタなタイトルの本を?
と思いつつも気になって手にとってしまった。
なぜなら、この間も書いたように、雇用関係の事業を展開中なので、
その参考になればという思いがあって。
そしてさっそく読んでみたら、これがビンゴ!ビンゴ!
働くということは、世の中や時代に働きかけ、歴史の進歩に加わること。
働く姿勢で大事なのは「素心」であること。
できるだけ若い人にこういう本を読んでもらいたいなあ。
オレはもうバックストレートに入っているようなもんだけど、
「仕事を通じて自分は世の中にどう関わっていくのか」
を改めて意識したいものだ。


File No.350
『「黄金のバンタム」を破った男』百田尚樹(PHP文芸文庫 667円)
オススメ度★★★★☆

「面白い」「オモシロイ」ばっか連発して恐縮だが、
この本もスゴク面白いゾ。
百田尚樹にハズレなし。

『海賊とよばれた男』が経済界で日本の戦後復興を象徴したのに対し、
この本はボクシングで戦後の日本人を勇気付けた物語、いやノンフィク
ションである。

主人公はファイティング原田。
オレから上の世代でこの名前を全く知らないという日本人は少ないのでは、
というほど一世を風靡した名プロボクサーである。
ファイティング原田ガ活躍した頃、オレは小学生。その記憶もおぼろげ
だったが、この本を読んで、そのスゴさがよくわかった。
取り上げるんだったら、なぜ日本人初の世界チャンピオン・白井義男じゃ
ないのか、なぜ日本人としてのチャンピオン防衛記録を持つ具志堅用高じゃ
ないのか?
この本を読めばよくわかる、ファイティング原田でなければならないことを。
そして彼が、日本人初のボクシング殿堂入りし、WBCの「偉大な26人の
ボクサー」に日本人としてただ一人彼が入っていることを。


File No.351
『かすてぃら』さだまさし(小学館文庫 552円)
オススメ度★★★☆☆

先週の日曜日の夜、何気にテレビを見ていたら、同名のドラマをやっていた。
つれづれに見ていると、これがなかなか面白そう。
ってなわけで、せっかちなオレはさっそく原作本を買って、その日のうちに
読んじまった。

これは、長崎出身のシンガーソングライターさだまさしの自伝的物語である。
さだまさしが、グレープという二人組でバイオリンを弾きながら「精霊流し」
という歌でデビューした、ということをリアルに知っている人も、もはや
50歳以上だけかも知れないなあ。

この本は、さだまさしの父親が亡くなる前の数カ月の間、その看病を通じて、
幼き頃の家族との思い出を回想していく趣向になっている。
さながら、ビートたけしの「たけしくん、はい」や、「ALWAYSー三丁目の夕日」
のような趣きであり、また時代もほぼ同じころだ。
これらの物語に共通しているのは、いずれも「貧しかった」ということ。
貧しかったからこそ、人間関係が濃厚で、温かく、そして将来への明るい希望
があった…、のだと思う。
たまにこういう本を読むとほのぼのしてくるなあ。







2013.07.15:ycci

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