天地人

▼300回記念 五つ★披露!

よくも300回も続いたものだ。
我ながら感心しきり。
この先どこまで続くかわからんけれど、勝手気ままに
やっていくとするか。
で、先日某氏から「八重の桜」についていろいろ話を
聞く機会があった。そう、来年の大河ドラマである。
興味関心が湧いてきて、なんか読んでみたいと探して
いたところ、
そうだ、アノ本があったじゃないか、と思い出し、
本箱の隅からやっとこさ探し出した。
そう、これこそ300回記念にふさわしい。

File No.300
『闇はわれを阻まず 山本覚馬伝』鈴木由紀子(小学館 1575円)
オススメ度★★★★★

この本が上梓されたのは今から14年ほど前。
その頃のオレはノンフィクション物にハマっていて、手当たり次第
貪るように読んでいた。
当然この本もすぐ入手して読んだ。
そして感動した。
しかも書き手は女性。
女性でここまで調べ書き込めるなんてスゴイと素直に感心した。
さらに、密かにリスペクトしたその女性作家が米沢出身であることを
知るとともに、直後に少しばかりではあるものの知己を得たことも
オレにとってはオドロキだったのだ。
21世紀国際ノンフィクション大賞の優秀作に選ばれたこの作品は
鈴木由紀子サンの出世作にして代表作(とオレは思う)。
ひとつの本を2回以上読むなんて余りないオレだけど、
今回14年ぶりに再読してみてまた感動を新たにした。

さて山本覚馬。
会津藩士にして、盟友の新島襄とともに同志社を設立し、京都の
近代化に尽力し、京都府議会初代議長や京都商工会議所会頭などの
要職を務めた。
盲目にして脊椎損傷という二重の障害を負いながらも、会津士魂を
燃やし続け、日本の近代化に身命を賭した男の波乱万丈の人生が
見事に描き出されている。
日本の近代化に向けた提言としては、竜馬の「船中八策」などが
有名ではあるが、覚馬の「管見」はより具体的で、今の世でオレが
読んでも卓見である。
美辞麗句の理念でもてはやされる人物が多いけど、実質的な施策要綱
をキチンと示せるような人はそう多くはない。
「建て前」の社会と言われる所以のひとつだと思う。
覚馬は会津士魂を持ちながらもリアリズムを重視した合理主義者だった
のではないだろうか。そういう人間の力こそが実質的な社会改革に
つながっていくのではないだろうか。

さて八重。
山本覚馬の妹にして、男勝りの行動で会津戊辰戦争に臨んだことから
日本のジャンヌダルクと異称される。
戦後は兄・覚馬のいる京都に身を寄せ、新島襄と結婚し、終生夫に
寄り添いその活動を陰に陽に支えた。
芯が強く、明るく奔放的で、キリスト教の洗礼を受けた開明的な女性。
八重のこともこの本では多く触れられているし、兄・覚馬を中心に
この激動の時代のうねりみたいなものを感じながら読める本なので、
「八重の桜」を観る前の予習≠ニしても絶好である。

とは言っても、この本は現在再版されておらず、市場に出回って
いないらしい、と冒頭の某氏がおっしゃってた。
なんかネットオークションでも高値でやりとりされてる
とか…?(真偽のほどはわからないが)
きっと再版されるんじゃないかしら、と待ってみるか、
ダメモトで古本屋にあたってみるか、さもなくば図書館で
借りて読むか…。
いずれにしてもこの本はイチオシ!
さらに付け加えて、
この『闇は…』を凌ぐような作品が彼女の手から紡がれることを
心から期待したい。
2012.02.19:ycci

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