天地人

▼心地よい売場

某市の某書店にたまたま入った。
最近は書店も大型ばやりだが、この店は小型に近い中型
といったところ。
この店なぜかしら心地よい。
買うつもりはなかったのに5冊も買ってしまった。
(積ん読増えるばかり…)
なぜ…?
什器(棚)が低いから圧迫感がない、というのもあるかなあ。
でも、そういう書店って結構あるし…。
ほどなくしてそのワケがわかった。
ひとつは平積みの本のセレクトがオレの好みに合ってること。
もうひとつは、小さなPOPのコピーがおざなりじゃないこと。
思わずその本を手にとってしまうようなキャッチなんだなあ。
こういうのって、本を読みこんで、客の立場にたって、踏み込んで、
しかもシンプルに…、なかなか書けないよお〜。
ほんの20分ぐらいだったけど、たいへんタメになりましたとさ!

File No.298
『同性愛の謎』竹内久美子(文春新書 740円)
オススメ度★★★☆☆

この本も件の書店で買ってきたもの。
この著者の名前を見たらピンときた。
そう、『女は男の指を見る』でけっこうスゴイことを平然と
書いていた人だ。
フツーの人が書くとヘンタイに思われるおそれがあるが、この
女史は動物行動学を専門とする学者であるから、きわめて学術的である。
学術的ではあるが、わかりやすく面白い。
今作も買うのが少しはばかれるようなタイトルだが、めったに
たのまない本のカバーをしてタイトルが見えないようにしながら
目を皿のようにしたり、まん丸くしたりしながら読んだ。

ところで、同性愛って遺伝が大きく作用してるって知ってた?
かの有名なキンゼイリポートによると、
男性同性愛者は全体の4%、バイセクシャル(同性・異性の両刀使い)は
10数%にのぼるそうだ。
もちろん多少の誤差はあるだろうが、かなり信憑性の高い数字らしい。
4%というと、「なぜクラスに一人いるのか」という副題がよく
わかる。
男性同性愛者は異性愛者の5分の1しか子孫を残せない。
なのに、なぜ4%という数字が維持され続けているのだろう、
というのが、この本の主題になっている。
それは、男性の性染色体XYのXの方に遺伝子が乗っているから。
Xは母親から受け継いでいる。
なんとなれば、男性同性愛の遺伝は母系で受け継がれている。
母系の伯母・叔母たちが遺伝子の受け継ぎ手なのだ。
その証拠のひとつに、男性同性愛者の母系の伯母・叔母たちは
多産であるという結果がでている。
そして、男性同性愛者のもうひとつの特長は兄が多いということ。
これも統計が如実に物語っている。
なんだかタネあかしをしてしまったような感じだが、この本は
もっともっと興味深いことがたくさん書いてある。
オレはフツーの人なんで、ここで文字にすることは憚られるが、
飲んだ時にでもお話しましょうかあ。

この本を読んでもうひとつ感じたこと。
それは、同性愛者への偏見があまりなくなってきたということ。
バーンスタインやエルトンジョン、フレディマーキュリー(クィーン)
などの超有名人たちも同性愛者であることをカミングアウトしてるし、
同性婚に近い形も先進各国を中心に認められてきている。
4%+10数%はもはや特異なマイノリティではなくなってきている
のかも知れない。


2012.01.29:ycci

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