天地人

▼わずか1時間で

事情があってここ数日毎日のように家と山形市を往復している。
その都度思うのだが、わずか1時間ぐらいの距離なのに、
なぜこうも違うのだろう。
天気というか、有体に言えば雪のこと。
何も今に始まったことじゃないけど、ちょいと違いすぎじゃないか。
今朝なんか寒くて少々吹雪かげんの中、遅刻しちゃいけないと
ばかりに2時間半前に家を出た。
南陽・上山までほぼ順調。
山形に近づくにつれ、さらに順調。しかも、あったかい。
しかも、しかも、市街地には殆ど雪なんかないのよ。
そこで、山形の親戚の人に言ってやった。
「山形はかわいそうだね、天からの贈り物が少なくて」
「天からの贈り物?」
「雪だよ、雪!」
「へっ?」
そんぴん者のカラ強がり絶好調。

File No.289
『上杉茂憲−沖縄県令になった最後の米沢藩主−』
童門冬二(祥伝社新書 760円)
オススメ度★★★☆☆

山形の帰りの夜、いつもとは違う本屋に寄ったら、新刊本の
コーナーにあるこの本が目に飛び込んできた。
もう即購入、帰宅後即読み出し、深夜読了。
うむ〜、鷹山公の精神と言うのは、歴代藩主に脈々と受け継がれて
いるんだなあ〜、というのが率直な感想。
何せ、出だしが最高にいい。
「山形県米沢市は、わたしの好きな町だ。」ときたもんだ。
いきなり嬉しいことを言ってくれるじゃん。
童門さんの講演も何回か聴いたことがあるが、これまたナカナカ
いい。基本的に上杉とか米沢にシンパシーがあるから、地元民
としても心地よいものがある。

最後の米沢藩主・上杉茂憲は、版籍奉還・廃藩置県の後、
東京に移住し、外国に留学。
その後、第二代目の沖縄県令(今で言う県知事か)に任命され、
部下であり元家来でもある池田成章(後に明治財界の巨頭になる
池田成彬の父)らとともに赴任する。
さっそく全島を自分の足で視察し、「旧慣温存」の実態と民の
困窮ぶりを目の当たりにする。
「旧慣温存」とは、新政府が沖縄統治の基本としたもので、
旧習や昔からの慣習を沖縄だけはそのままにしておくというもの。
そこには搾取の構造が根強くあった。
茂憲と成章は、中央の新政府に対して改善・改革の建白書を
提出し、みずから陳情に赴く。
赴任前に上杉家中の人たちと誓った、鷹山公の精神である
「民の父母」の心をもって沖縄に行くということを肝に銘じて
いたのである。
しかし、茂憲は沖縄県令を更迭されてしまう。

茂憲の沖縄県令在任期間は短かったが、いくつもの「火種」
を遺してきた。有為な若者を内地留学させ、沖縄の近代化を
担う人材育成の礎となった。
また、茂憲は私費で3000円を沖縄に寄付した。
今の貨幣価値で言うと1億円以上とも言われる。

沖縄と米沢の縁はこの茂憲から始まっているのである。
いろいろと感心させられたが、欲を言えば、もう少し、
茂憲の人となりを知りたかった。

2011.12.24:ycci

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