天地人

▼思い出は苦い

コンビニで珍しいタバコを見つけたので買ってみた。
その名は「SHINSEI」(しんせい)。
昔からあるから、珍しくも何ともないのだが、未だに
売っていることが珍しく思えたので…。
実は、オレが初めてタバコっちゅうもんを吸ったのは、
忘れもしないこの「しんせい」だったのだ。
どれどれ久しぶりに、と火を付けて一口吸ったら、
とたんにゲボゲボと激しくむせ返ってしまった。
おさまってからもノドが苦くていがらっぽくてしょうがない。
両切りで強くて、これぞタバコ!なのだが、とっても今の
オレには吸えたもんじゃない。
初めて吸った時も苦かったが、今はその時の思い出以上に
苦い!

File No.276
『どくとるマンボウ青春記』北 杜夫(新潮文庫 514円)
オススメ度★★★★☆

先日、北杜夫の本を取り上げた時、この本のことについても
ちょっとふれたが、それから無性にもう一度読みたくなった。
必ずあるハズなのだが、家じゅうを探しても見つからない。
仕方なく本屋に行ったのだが、そこでも品切れ。古本屋にも
ないので、仕方なくネット購入と相成った。
ちなみにオレは、よっぽどでないとネットで本は買わないことに
している。まずは地元の本屋・古本屋に行く。
なければ図書館へ。
なぜか?
やっぱ、本は手にとって表紙や目次、前書きなどをパラパラ見ながら
買うものだからである。他の買い物はきわめてルーズだけど、本だけは
リアルしか信用しない。
それに、みんなネットで買っちまって、街から本屋がなくなって
しまったらすごく困るし、寂しいからね。

で、早々にこの本の頁を繰り出した。
とたんに、何だが懐かしさで胸が一杯になるような感じ。
北杜夫こと本名・斎藤宗吉青年の旧制松本高校時代の物語。
陳腐な言い方になるが、古き良きバンカラ青春記。
面白可笑しく、奇妙奇天烈な人間が数多く登場する。
もちろん、北杜夫自身も含めて。
だけど、この本が懐かしく感じられるのは、面白可笑しいから
だけじゃない。
そこには、青年期の心の葛藤や、精神の遍歴、未来への憧憬と不安などが
散りばめられている。
試験の出来不出来が人生を決めるわけじゃない、ということも
この本から学び、大いに慰められ、励みになった。
それと、この本、いや、北杜夫の著作に共通していることは、
どこかにいつも憂愁の影が忍び込んでいるということ。
本人は「感傷癖」と卑下してるけど…。
みんなとバカ騒ぎもするけど、アルプスの大自然を眼前にして
一人涙する、そんなことってみんな何かしらあるから、共感を
誘うのかも知れない。

先日ある人が言った。
「絶望の反対って何だと思う?」
「希望…?」
「いや、絶望の反対とはユーモアなんだ」
これには感服した。
北杜夫のユーモアは、多くの人々を絶望から救った。
以って瞑すべし。合掌。

2011.11.20:ycci

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