天地人

▼ありえない≠Q連発プラス1

前回予告した今までのオレにはありえない*{を
二冊も買ってきた。
まったく奇想天外な本でもなく、まあほんの少しの
踏み出しといったところか。
オレもあんまり意外性がないねえ〜。

File No.273
『さよならもいわずに』上野顕太郎(エンターブレイン 780円)
オススメ度★★☆☆☆

さて、どんなありえない*{を買おうかと思って本屋の中を
うろついていたら、ふとあるコーナーに目が止まった。
「大人のコミックがブーム」みたいなPOPがあって、
数冊ほど新聞の書評コピーとともに並んでいた。
これだ!久々にマンガだ!
と思い、ひとつひとつ吟味していくと、まあ、多くがゴテゴテ
した過剰書き込み超劇画みたいで、オレの好みではない。
唯一、リアルで落ち着いたタッチのこの本を選んで、
さっそく読んでみた。
読み終えるまで、なんとわずか1時間足らず。
悲しい物語(実話)なのだが、いまいち琴線にふれてこない。
作者の喪失感の深さはよく伝わってくる。
もしこれがオレだったら、と思うと何だか怖ろしくなる。
作者が漫画家だからこういう表現をしたのだろうが、やはり
これは文字の物語の方がオレにはいいなあ〜。


File No.274
『ツレがうつになりまして。』細川貂々(幻冬舎文庫 457円)
オススメ度★★★☆☆

これは、ありえない*{のつもりで買ったわけじゃなくて、
本のカバーを見て、何だか話題になっている本だな、と思って
ついで買いしたもの。
本を開いたら、なんと、これもマンガじゃないか!?
「え〜、知らなかったの?」
と思われるかも知れないが、正直言って「知らなかった」。
雑な絵(失礼)で、ほっぽっておこうかなと思いつつ、ながめる
ように読んでいくと、ほうっ、こりゃなかなか面白いではないか。
これも作者の実話というだけあって、絵は雑(たびたび失礼)だけど、
中味は結構リアル。
ウツ病というと、どうしてもクラくなりがちだが、そこをマンガの
特性でもある軽妙なシャレ気で読者を余り落ち込ませていない。
そんなところが、シリーズ100万部突破という数字になっている
のかも知れない。
悲しいことを「悲しい」とストレートに言ったんでは、もはや
表現芸術とは言えない。自分で笑いながら演じている喜劇役者は
面白くなく、大真面目に喜劇を演じる役者こそが、可笑しくもどこか
物悲しさが漂う。それは、チャップリンを観ればよくわかる。
つらいこと、悲しいことには正面から向き合わなければならないが、
気持ちまで萎ませないで、ユーモアを忘れずに、元気に明るく行こう、
という作者のメッセージ(おそらくダンナへの心からのエール)
が明快に伝わってくる。
こういうのだったら映画も観てみたいなあ〜。


File No.275
『スティーブ・ジョブズ 神の遺言』桑原晃弥(経済界新書 800円)
オススメ度★★★☆☆

昨日、日本のIT先駆者の一人である坂本桂一氏の講演を聴く機会に
恵まれた。
寡聞にして同氏のことをあまり知らなかったので、半信半疑で
臨んだのだが、その講演内容はベリーグッド!
オレの今年一番、か二番。
要約すると、
1.スレッショルド(閾値)を越えられるか
2.スピード次第で結果が変わる
3.クールな眼と頭を持て
ということ。
なんのこっちゃ、と思われる人は、氏の著書を読んでみるといい。
オレもさっそく注文した。

で、こちとらは、先月56歳の若さで亡くなったスティーブ・ジョブズ
の追悼本とでも言うべきか。
今、本屋さんには同種の本が多く並んでいるよなあ。
その中でも、比較的手軽そうなこの本を買ってみた。
繰り返しがやや多く、深さもさほど感じられないが、彼の人となりや
業績、来歴のおおよそがわかる。
彼はエンジニアではなく、アートディレクターもしくはプロデューサー
としての天賦の才があったのだろう。
「すぐれたデザインをなし遂げるには、製品の本質を理解しなければ
ならない。鵜呑みではなく、十分に対象をかみ砕く作業なのだ。
ほとんどの人は物の本質について十分な時間をかけて理解しようとは
しない」
そしてまた彼は、単なる製品プロダクトではなく、新しいライフスタイル、
新しいパラダイムを切り拓き、広めていく天才でもあったのだ。
「飛ぶためには、まず空が必要だ。ジョブズには空をつくる力があった
のである」
ジョブズは空をつくるために、凄まじいまでのハードワークをこなして
きた。アップルを創業した20代の頃にすでにスレッショルドを越える
術を体得していたのである。



2011.11.13:ycci

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