天地人
▼これぞ行楽日和
世の中は秋の三連休。
明日は一部天気が崩れるようだが、まずは絶好の行楽日和
といったところだ。
オレもちょいと用事があって高速道路にのったら、混むわ
混むわ。とくにインター出口は長蛇の列。
SAやドライブイン、観光施設もメチャ混み。
混むのが好きな人はいないだろうが、オレはとくにダメ。
イライラが高じて、何だか頭まで痛くなってきた。
で、ついに目的地キャンセル、途中でUターン、帰宅して
フテ寝と相成った。
まあ、こんなこと一度や二度ではないので、家人も
「ああ、またか」ってなもんで平気の平左。
いくつになっても「待つ」ことを知らないねぇ、オレも。
File No.265
『田中角栄の恋文』(文芸春秋2011年11月号 820円)
オススメ度★★★☆☆
「田中角栄」という名前を知らない人はあまりいないだろう。
いや、平成生まれがもう二十歳を超えているくらいだから、
名前は知っていても、全盛期の彼をリアルに知っている人が
少なくなってきてるのかも知れない。
新潟県出身。高等小学校卒ながら日本の頂点にまで上り詰めた男。
第64代内閣総理大臣に就任したのが昭和47年。
オレが中学の頃。ちょうど政治にも興味がわき出してくる年頃
だったので、福田赳夫との首班指名争いを、少し高揚した気分で
見ていたような記憶がある。
戦後の首相の中で、彼ほど功罪の振幅が大きい人はいないのではないか。
功は何と言っても日中国交正常化。
罪はロッキード事件での収賄。
功罪相半ばするのが日本列島改造論。
彼の強烈な個性と、コンピュータ付ブルドーザーとあだ名される知識と
行動力、ギラギラした欲望とそれを叶えようとするエネルギッシュは
多くの人を惹きつけた。
田中角栄は結局悪いことをしたけれど、人間として嫌いじゃない、という
人は結構多いと思う。
この人間が持つ強力な磁場のせいである。
田中角栄凋落の端緒となった「田中角栄研究」を著した立花隆も、
彼の罪悪を糾弾しつつも、どこかで田中角栄にシンパシーのようなものを
感じてるフシがある。
昨日発売になった文芸春秋の巻頭に、在りし日の田中角栄が、愛人にして
金庫番でもあった佐藤昭子とその娘・あつ子にあてた直筆の手紙が
公開されている。
まさに、本邦初。
佐藤昭子がいたから、田中角栄も人身位を極めることができたと言われる
ほど、彼女の存在は大きかった。
しかし、正妻の座には座れず、田中との間に生まれた娘も認知されず、
ひたすら金銭という裏で田中を支えることに徹した女…。
見るからに気が強そうだ。
プライベートでは、田中は佐藤から相当厳しいことを言われていたようだ。
それに理解を示したり、なだめたり、すかしたり、おだてたりする
田中のラブレターが、すごく人間臭くていい。
普段は威張り散らしていても、惚れた女にゃ弱いのだ。
な〜んだ、田中角栄もフツーの男だったんだなあ、とはオレは思わない。
これほどまでに愛人に心と身を寄せようとする男。
日本一多忙な身ながら、本宅と他の妾宅を駆け回り、いずれにもあふれん
ばかりの愛情を尽くす男。
愛人との間に出来た娘に盲目的とも言える愛情を注ぐ男。
こんなに筆まめな男。
女の前で心を裸に出来る男。
てらいなく愛情を表現する稚気。
こんなはかりしれないスケールの男そうザラにいるもんじゃない。
庶民から天下人に上り詰め、思いのたけ権勢をふるい、世の中を変える
ような仕事をし、正妻を信頼しながらも、側室を愛しみ、一粒種の
息子を盲目的に愛し、いまわの際でも息子の後援を必死に懇願する男、
豊臣秀吉とますます重なって見えてくる。
田中角栄が「今太閤」とあだ名された所以でもあるが…。
田中角栄ってやっぱり豊臣秀吉の生まれ変わりなのかもなあ。
2011.10.09:ycci
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