天地人
▼好きな街は
日本の中で好きな街は?と問われたらどこを挙げるだろうか。
もちろん、自分が住んでる街や生まれ故郷を除いての話。
こんな話をしながら酒を飲むのも秋の夜長の一興かもしれない。
で、オレの場合は、いろいろ思い出しながら考えるけど、まずは
この三つは必ず挙げるだろう。
備中高梁(岡山県)
豊後竹田(大分県)
越中八尾(富山県)
それぞれ行ったことがある人も多いだろうから、詳しい解説は
無粋かも知れない。
今夏も越中八尾にちょいとばかり行ってきた。
都合3回目になるが、何回行っても心にシックリくる街だ。
「おわら風の盆」を何とか数年のうちに観てみたくて、その
段取りのとっかかりをつくろうと思って出掛けたのだが…、
それは意外な線から実現に向かいそうだ。
やっぱり、人とは交わってみるもの、話してみるもの、だ。
ここ数年のうちには報告できるかもよ~。
File No.261
『風の盆恋歌』高橋 治(新潮文庫 438円)
オススメ度★★★★☆
「風の盆」に行きたくて行きたくている時に、古本屋でこの本を
偶然にも見つけ、即購入、即読み。
なんだか、ド演歌調の恋愛小説かなあ、と思っていたら、
どうして、どうして。
文体も洗練されているし、今風の小説みたいに説明し過ぎて野暮ったく
なるようなところがないし、ストーリー展開もドラマティックで
なかなかの好作品だ。
何よりも、坂と水音の街・越中八尾の街の描写が情緒的でいい。
そして、普通の盆踊りとは趣きを異にする、胡弓の音が何となく
物悲しくて幻想的な踊りをうまく表現している。
ここで知ったのだが、「風の盆」とは二百十日に風害除けをする
ことから始まったらしい。
主人公の都築とえり子の物語は金沢からはじまって、八尾をかすめ、
フランスのノルマンディへと飛ぶ。
そして、20年以上もの空白の時を越えて、再び八尾で再会する。
二人の旅路は危うく、常に死の影がちらついている。
いわゆる「道行き」のような趣き。
その結末は、やはり…。
「風の盆」の胡弓の音色のように、哀しい物語でもある。
この本を読んだら、また無性に八尾に行ってみたくなった。
どこかに都築のような男と、えり子のような女がいて、
あのゆるやかな石畳の坂道の街に、二人がほんのひと時だけを
過ごしたしもた屋のような家があるような気がしてくる。
そもそも恋愛小説を読むようなガラじゃないし、あまり好きでも
ないのだが、大人ゆえの哀しみが滲むような物語だったら
読む価値あるよなあ~。
これがいいと思える人、もしくは、わかるなあと感じる人はオトナ。
いいと思えない人、わからない人はまだガキ、かな。
な~んてエラそうに言ってるオレも、昨日は老母に、
「50なんてまだまだ洟垂れ小僧だっ!」
と一喝されて、言葉では反論したけど、その実、内心は
かなり応えてたりして…。
んじゃまあ、70歳ぐらいになったら告白してみっかな。
それも、単なるキモいエロジジとしかみられないだろうなあ~、
ああ哀しっ!
2011.09.26:ycci
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