天地人

▼今年も元気なぴょん太

夏から今頃までの季節にかけて、我が家の台所のマドに
いつも「ぴょん太」が張り付いている。
こんな小さなカエルが地表から3mはあるマドに登ってきて、
明るさに誘われて来る小虫たちを待ち伏せしてるのだ。
小動物好きのオレとしては、毎年やってくるこのぴょん太が
愛おしくてたまらない。
マドの閉め方が甘い時などは、台所のシンクにちょこんといたりする。
家人や老母が見つけた日にゃ、断末魔の叫び声が近所中にこだまする。
オレは平然と優しく両手で包み込み、庭の茂みに戻してやる。
本当は飼いたいのよお。
一度冗談めかして家人に言ってみたら、
「冗談じゃないわよっ!」と一喝。
そりゃそうだろうな、男子の興味関心事なんて女子にわかるわきゃねえ。
しょせん違う生き物なんだ、きっと。
本当は、カメを飼いたいんだよなあ〜。
少年の頃からカメには逃げられっぱなし。
すげえ夜行性なんだよなあ、カメ吉は。

File No.258
『忘れないあのこと、戦争』早乙女勝元選(文芸社文庫 600円)
オススメ度★★★★☆

先の終戦から66年が経った。
戦争体験者の多くが既に鬼籍に入られ、記憶の風化が始まっている。
絶対忘れてはならない、と言いつつも、世代が変わると記憶が薄れて
しまう。
それはそれで致し方のないことではあるが、せめて「伝え語り」を
聞き、それをまた後世に語り継いでいかねばならないのでは、という
思いが近年とくに強くなってきて…。
そんな思いもあってこの本を手にとったのだが、涙なくして読めないものや、
こんなことがあったのか、という驚きがちりばめられていた。

そう、これは、戦争体験の選集である。
一般から募集して、なんと1559編の応募があったと言う。
その中から42編を厳選して収録したのがこの本。

東京大空襲、広島・長崎の原爆、学童疎開、大陸・半島からの
引き揚げにまつわる体験談が多い。
中でも「真白いごはん」は恥ずかしながら深夜の枕を濡らしてしまった。
毎日毎日出てくる大豆ごはんが嫌いな少年勝司は、その朝また母親に
諌められ、幼いつぶらな瞳に涙をいっぱいためながら登校した。
そして二度と家に帰ることはなかった。
時は1945年8月6日、場所は広島。
そう、少年勝司は「真白いごはん」を夢見ながら、あわれ原爆の犠牲に
なってしまったのだ。
母の述懐、
「私はその朝、食事のことで子供を叱って登校させました。涙を目に
いっぱい浮かべて家を出て行った姿。五十数年経ってもその姿が
目に浮かび、後悔致しております」
母親だって「真白いごはん」を腹いっぱい食べさせてやりたかったに
違いない。
でも、戦争という状況がそれを許さなかった。

こういう実話が42編収録されている。
本来なら、一日一編ジックリ、ユックリ読みたい内容でもある。
そして、せめて伝え語りでも、われわれ一般国民にとっての戦争とは
どんなものであったかを、ひとつひとつ心に刻んでいきたいものだ。

因みに、敗戦の年の平均寿命は男性23.9歳、女性37.5歳だった
そうだ。今の長寿命社会と比べると、いかに異常で異様な社会状況
だったかがわかる。

選者は最後にポツリ。
「過去は消えない。過ぎ去りさえしない」

2011.09.13:ycci

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