天地人

▼またもやダブリ!

毎晩寝床で本読むのが永年の習性になっている。
つい先日も枕元に本を置いてたら、家人が、
「この本読んだんじゃない?そこの本棚にあるよ」
「ええっ!記憶ねえなあ」
「あるって。だって私読んだもん。最初が心中の話でしょ」
(むむ…、確かにそうだ。またやっちまったか)
「黙って人の本読むなよ」
と、テレかくしのフテ寝決め込んだ。
(クソッ、もうオレのハードウエアはいっぱいいっぱいかあ…。
思い出したくないようなイヤな記憶だけ初期化出来ないもんかねえ)

File No.255
『あやし うらめし あなかなし』浅田次郎(双葉文庫 619円)
オススメ度★★★☆☆

そのダブリがこの本。
まあいいや、もう一回読んじゃえ、と思って読み進めていっても、
なぜか一向に既読感がない。
これはきっと、買ってすぐに家人に読み盗られたために、その
存在すら忘れてしまったに違いない。
本は確かに同じもの2冊あるけど、読むのは初めてだ。
(ということにするっ!)
稀代のストーリーテラー浅田次郎が、いま再び注目を集めている。
1回目は『鉄道員』で直木賞をとった時。
これはいい作品だよなあ。
映画も良かったあ。
誰の人生にも1回ぐらい奇跡が起きるかも知れない、と思ってしまう。
同じ本に収録されている『盂蘭盆会』も良かったなあ。
そして2回目の今回は、だいぶ以前の作品である『日輪の遺産』が
映画化され話題になっているらしい。
かく言うオレも、この本で浅田次郎を読むようになった。

それから比べると、今回のこの本は少し食い足りない。
中味は、コワイばかりじゃない「怪談」7編。
最初の『赤い絆』は確かに少し気味が悪かった。
『骨の来歴』は何だか読んだことがあるような…。
なかなか心がジーンとする「怪談」である。
『客人』もコワい話だけど、何だかいい話なんだよなあ〜。
『遠別離』はオレ的にはちょっといまいち、かな。
いずれにしても、まだ残暑厳しきおり、少しばかり背筋が寒くなり、
少しばかり心がポっとする佳品のような物語集である。

蛇足ながら、
「怪談」だからと言って、夜読んで眠れなくなったり、トイレに
行けなくなるようなコワさはない。この怖がりのオレでもね。




2011.09.03:ycci

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