天地人

▼“池井戸潤”三連発・その1

この間の日曜日、天気が良かったので、近くの里山を
小1時間ほど歩いてみた。
春の野山は気持ちいいなあ。
新緑が目にも眩しいばかりで、小川のせせらぎも清々しい。
でも、オレの目的はもうひとつあって。
そうそう、春山の恵み「山菜」なのよ。
本格的な山行きは来週に譲るとして、まずは小手調べに。
ワラビ・タラノメ・コシアブラ・ウドを少しずついただいてきた。
オレなりのモットーは「必要以上に採らない」こと。
欲を出し過ぎるとロクなことはない(経験上)。

File No.232
『オレたち花のバブル組』池井戸 潤(文春文庫 657円)
オススメ度★★★★☆

ある新聞の書評欄を読んでいたら、池井戸潤の最新刊の紹介があって
少々興味を引かれた。
さっそく本屋で探してみたが、該当の本が品切れで、仕方なく同じ著者の
別な本を買ってきた。
タイトルが少しベタなので、余り期待をしないで読み始めたら、
なんのなんの、これが結構面白くて止められなくなった。
久々に面白かったので、今回から、「池井戸潤」シリーズを3連発
でアップする。

この物語の主人公は、東京中央銀行営業第二部次長の半沢直樹。
バブル華やかなりしころの大量入行組で行内で生き残っている一人。
この半沢という男は、情に篤く義を曲げず、勇気凛々と難問に
立ち向かって行く。
貸付先の巨額運用損失や粉飾決算、浮き貸し、背任行為、金融庁検査
などに正々堂々と切り込んでいく姿は、清々しささえ覚える。
半沢は言い切る。
「オレは基本は性善説。しかしやられたら倍返し」と。
男はやっぱそうでなきゃなあ。
少なくとも真摯に生きてる人間は、それなりの意地とそれぞれの
人生や生活をかけて仕事してるワケだから、悪意をもって陥れられたり、
嘲られたりすれば、倍返しはトーゼン。
理不尽に1発殴られたら、思いっきり2発3発殴り返す。
陰にこもらず、正々堂々と。
マトモな男なら多少なりとも持っているこんな思いを、痛快に果たして
くれる物語だから面白いのだ。

半沢と同期入行で「心の病」を患い、出向となり、脱落しかけた
近藤という人間も、あることを境に立ち直りをみせていく。
「一日の半分以上も時間を費やしている仕事に見切りをつける
ということは、人生の半分を諦めるに等しい。…いい加減に流す
仕事ほどつまらないものはない。そのつまらない仕事に人生を
費やすだけの意味があるのか?」
という言葉は、オレたち多くのサラリーマンの琴線に触れてくる。

著者自身、都銀勤務の経験があり、ひとつひとつの描写やディテール
もすごくリアルで、いかにも現実にありそうなことばかり。
そして、ストーリー展開も余り作為的に見えないところが気に入った。
さらに、半沢の最後の処遇も、わざとらしくなくていい。
これが、二階級特進なんて、サラリーマンの出世物語を絵に描いた
ような某マンガみたいな流れだったら、興味も半減だったろう。

仕事に対する自分の基軸をしっかり確立させながら、それぞれの
問題にどう対処し、それぞれが如何なる結末を迎えるのかは、
読んでのお楽しみ。
まあ、東京往復の車中でちょうど読めるぐらいだろうか。
たぶん移動時間の長さを忘れるぐらい没頭できると思う…。


2011.05.17:ycci

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