天地人

▼驚天動地

また知ったかぶりして難しい言葉使って…と某氏に
言われそうだが、あえて。
(そういう非難にはオレなりに大反論もあるのだが、
まあまあここはおさえて)
驚天動地「きょうてんどうち」
地が動き天が驚く、つまり天地がひっくりかえるような驚き。
この言葉がぴったりのここ2週間だった。
読みかけの本も3月10日からそのまま。
かれこれ2週間以上も本を読む気になれなかった。
ずうっとテレビにくぎ付け。
正しい報道は、世の中を是正・修正していく働きがあるんだなあ
と少しばかり実感した次第。

File No.222
『深夜特急5 トルコ・ギリシャ・地中海』沢木耕太郎(新潮文庫 438円)
オススメ度★★★★☆

昨晩は久々に寝床読書。
沢木青年の旅もいよいよヨーロッパに入った。
本編の特長は、随所に「旅論」が出てくること。
国情混沌としたインドや中東を抜け、安定したヨーロッパに
入ったことで余裕が出てきたのか…。
青年沢木はあえて言う。
「旅は人生に似ている」と。
湧き立つような興奮の毎日だった旅の始めに比べ、今はそんなに
興奮をおぼえなくなったと。
旅も人生も何かを失うことなく前に進むことはできない。
だから、旅は人生に似ているのだ。
確かに、旅を人生にたとえたり、歴史上の人物を会社経営者に
なぞらえたりすることは、沢木の感性ではまずあり得ないこと。
オレもそういうことは面映ゆすぎてキライだ。
そういう類のことを言う人に会うと、
「マジかよ、はずかしくないのかな」と心の中で思ってしまう。
だけど…
沢木の「旅は人生に似ている」には、その理由の源や、自ら実体験
してきたことの重みもあって、なぜか共感をおぼえる。
人は40歳代50歳代と進むにつれ、人生について考えるように
なると言うが、沢木もそうなのだろう。
なぜか?
それは、沢木が旅したのは26歳の時だが、この『深夜特急』を
まとめたのは10年以上も後のことなのだ。
旅の熱に浮かされるがままに書いたのではなく、少し冷静に
なってから、当時の自分の心の動きを遠距離から眺めながら
書いている。だからこそ、オレは面白く感じる。
理屈っぽい旅論だけでなく、本編では、青年沢木のおちゃめな
行動もいろいろ出てくるので面白い。
例えば、ギリシャのアクロポリスの丘に入る時に、インドで
作ったニセ学生証を提示して一蹴された話とか…、けっこう
笑える。
いよいよ次は『深夜特急』の終着駅だ。
2011.03.26:ycci

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