天地人
▼行く秋や
昨日は天気が良かった。
もしかして、今年これが最後かもと思うと
矢も盾もたまらなくなって、いろいろと用事は山積してたのだが、
2時間ほど無理矢理時間を作って輪行に出た。
今年新調した愛車ビーグルブルーUはすでに休眠させているので、
愛着あるビーグルブルーTで。
昼とは言え、さすがに晩秋の風は冷たいが、ほどなく爽快感に
かわってきた。
晩秋の米沢盆地の風景をながめながら、「行く秋や…」の感慨
にふけりつつ…。
(まあ、カッコよく言えばだけど)
File No.194
『永訣の朝 樺太に散った九人の逓信乙女』
川嶋康男(河出文庫 720円)
オススメ度★★★☆☆
前回に続き、戦争時の話。
オレの読む本はどうしても戦争にまつわるものが多い。
なるべく広い分野のものをと心がけているのだが、自分自身の
問題意識のひとつが太平洋戦争とは何だったのか、ということなので
知らず知らず多くなる傾向にあるようだ。
そういう性向を知っている知人某氏が貸してくれたのがこの本。
時は太平洋戦争終戦直後、ソ連軍が日本領だった樺太(サハリン)に
攻め入ってきて、身の危険を感じた逓信局(今で言うNTTか)の
女性交換手九名が次々と青酸カリ服毒自殺を遂げた。
彼女たちの今生の最後の言葉
「みなさん、これが最後です。さようなら、さようなら」
は、今でも北海道の稚内公園の石碑に刻み込まれている。
この悲惨な史実を、当時の関係者や記録をたどりながら描き出そう
としたのがこの本。
堅牢な局舎にとどまっていれば死ぬことはなかったのに。
男性が一人でも居たら支えられたものを。
なぜ連鎖的に発作的に自殺をはかってしまったのか。
局の責任者はどうしてたのか。戦後の回想にウソはないのか。
樺太に残った者と引き上げた者の運命の差は。
などなど、余すことなく書き連ねられていて興味が尽きない。
彼女たちが自ら命を絶つシーンを読んだ時には、思わず
頭を垂れて瞑目してしまった。
眼前に迫り来るソ連の軍艦と兵隊たち、そして絶え間ない機関銃の
銃声を聞かされては、年若い乙女たちが恐怖のパニックに陥る
のも無理はない。
彼女たちの戦慄と悲壮な決意を思うと万感胸に迫る。
著者は、なぜ彼女たちは死ななければならなかったのかを
中心テーマに書いているが、残念ながら核心へのアプローチは
いまひとつ物足りなくオレは感じた。
記述や構成も、オレ的にはいまいちだったかなあ。
「歴史叙述は情緒的でなければならない」と言った歴史家故林屋
辰三郎博士の言葉を想い出す。
2010.11.28:ycci
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