天地人

▼止めるか止めないか

タバコ大幅値上げを機に、止めるかどうかの岐路に立っている。
家族はトーゼン止めるものと思っているらしい。
オレ自身も、止めてもいいかナと思ってたんで、買いだめは
ほとんどしなかった。(少しした)
旧価格の最後の一箱が今日切れた。
うむ〜、どうしようか。
まっ、もう1箱吸ってから考えっかと高いタバコを買っちまった。
かつて4年間も止めた実績のあるオレ様だから、いつでも
止められる、とうそぶきつつ10年近く経とうとしている。

File No.176
『瀬島龍三 参謀の昭和史』保阪正康(文春文庫 505円)
オススメ度★★★☆☆

瀬島龍三という人物を知っているだろうか。
以前ここにアップした『不毛地帯』の主人公・壱岐正のモデル
と言われた人物である。
陸軍士官学校・陸軍大学を優秀な成績で卒業し、太平洋戦争時
には大本営参謀として日本軍の作戦を立案・指揮。
終戦後、ソ連軍に捕まり、11年間ものシベリア抑留。
帰国後は伊藤忠商事に入社し、数々の商戦で辣腕を発揮し、
同社を繊維問屋から総合商社へと育てた企業参謀と言われた。
そして晩年は、政府の第二臨調委員として、また、日本商工会議所
特別顧問など多くの要職につき、政財界に多大なる影響力を及ぼした男。
まさに人生を4回生きた男の足跡を、本書では丹念に追いながら、
その功罪を浮かび上がらせている。
オレは、この本を読むまでは、瀬島龍三という人物に対して、
崇敬の念しか抱いていなかった。
それは多分、『不毛地帯』の壱岐正の生き様とほぼイコールだと
思い込んでいたからだろう。
ちなみに、『不毛地帯』の著者・山崎豊子は、主人公壱岐正の
モデルについて、特定個人ではなく、同じような経験をした
多数の人への取材によって創り上げたもの、と言ってるらしい。
本書で興味を引くのは、瀬島の「功」ではなく、「罪」の部分だ。
大本営参謀時代の電報握りつぶし事件などは、あっけにとられる。
台湾沖空戦の日本軍の戦果が過大に発表されていた事実を
報告した電報を、瀬島が握りつぶしたのではないかとされている。
これは、その後のレイテ戦に大きく影響する。
また、ソ連側証人として東京裁判で証言した経緯も、何だか
不透明だ。
商社時代の暗躍、臨調での裏仕切りなどなど、本書では、
瀬島の奥底にある暗い部分を暴いていく。

人は誰でも「功」もあり、「罪」もある。
この本も、瀬島という男に失望させられるというより、より
深い奥行きとリアルさを与えてくれたような気がする。
だから、保阪正康や佐野真一などの人物ノンフィクションは
面白い。


2010.10.03:ycci

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