天地人

▼気をつけてても

不覚にも風邪をひいてしまった。
手洗い・うがいを励行しているハズなのに。
適度な運動で免疫力を高めようとしているのに。
ビタミンCを摂るように心がけているのに。
なぜ?
それは、数日前、風邪を引いているようなある方と
30分ぐらいお話をしたことから端を発する。
なんか、オレもうつっちゃったかなあ〜、と思ったら
案の定(早や!)。
ヤバっと感じる瞬間さえもわかっちゃうんだよなあ。
普段気を付けててもこればっかりは…。
その人も多分誰かにもらったんだろうし、
露骨に避けるのもイヤミだしねえ。
で、数日前にお医者さんに行ったら、
「もう、ここ数日は風邪外来みたいだよお」って言ってた。
どうぞ、お気を付けあれ。

File No.175
『終わらざる夏』浅田 次郎(集英社 上・下各1700円)
オススメ度★★★☆☆

この本、1週間前に読み終わっていたのよ。
で、アップしようと思った矢先に風邪で数日空いてしまった。
その間に記憶と感動がやや薄らいでしまった。
読んだ本の内容とか、観た映画の中味とか、忘れてしまう
ことってない?
オレはここ数年その傾向が顕著だなあ。
オレの「脳年齢」もそろそろヤバイのか。
いやいや、一度読んだもの、観たものは、知らず知らず
脳の奥のバックアップ装置で記憶されているハズ、と思いたい。
でも、ずっと引き出せないままだったら記憶されてないのと
同じか。はあ〜。

本題に戻って、記憶を引き出しながら…。
この本、浅田次郎が構想30年を経て書き下ろした作品という
ことで、発売当初から注目を集めていたようだ。
しかし、先に読んだ知人2、3人の読後感を聞くと、
いまいち芳しくない。
読んでみて、そういう評も仕方ないかなと思わせるものもあった。
稀代のストーリーテラー浅田次郎にしては少し感動や起伏が
少ないのではないかと感じるかも知れない。
この物語の舞台とは対極にあるような沖縄を舞台にした
『日輪の遺産』のようなインパクトは確かにないかもしれない。
しかし、終戦後に旧ソ連が仕掛けてきた企みにいきり立ち、
戦争に翻弄された人びとの人生に深く感じ入ったりするところも
多かった。
全編を通じて随所に出てくるアイヌの言葉
「カムイ・ウン・クレ」
(神、われらを造りたもう)
が、この作品の重要なキーワードにもなっている。
つまり、われわれ人間はみんな等しく神に造られたものなのに、
なぜにお互いを殺し合うのか、という問いかけでもある。
戦時中も日本人としての誇りを忘れさせないようにとの
教育者たちの姿にも感動させられた。
「自分の苦しみはけっして口にしてはならない。他人の苦労は
わがことと思って背負い、自分の苦労は語ってはいけない。…
難しいことではない。日本人なのだから。遠い昔からそうやって
生きてきた日本人なのだから」
というくだりには、つい熱いものがこみ上げてきてしまった。
まったく違う人生を歩んできた者たちが、ある意図の下、
最北の戦場で従軍することとなるストーリーは、奇抜さは
ないかもしれないが、十分に興趣をそそられる展開ではある。
そして何よりも、
「百人の戦死者には百人の人生があり、千人の戦死者には
千人の異なった勇気があった」
ということを心のヒダにしみ込ませてくれるような物語
でもある。

これを先に読んだ知人から「貸すから」と言われてたものを、
「いや、買いますから」と言って買ったはいいけど…。
好意に甘えても良かったかナア。
これから読もうと思ってる人は、文庫本になってからでも
遅くないかも。時が過ぎると旧くなるような内容じゃないから。



2010.10.02:ycci

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