天地人
▼欲望という名の宝くじ
今回もサマージャンボ宝くじを購入した。
1回平均で30枚買ったとすると、今まで通算何千枚買った
のだろうか?
それなのに、当選金額の最高はたったの1000円。
万を超す当選がないどころか、高額当選番号には、
組番号すらカスリもしない。
それでも買い続けるこの愚直さというか、アサましさというか、
われながらあきれてしまっている。
いつまで経っても欲望は断ち切れない。
File No.160
『寡黙なる巨人』多田富雄(集英社文庫 571円)
オススメ度★★★☆☆
国際的な免疫学者として活躍していた著者・多田富雄氏は、
ある日突然脳梗塞に見舞われ、右半身麻痺・嚥下障害・言語障害
という重度の後遺症を負ってしまう。
倒れる前までは、健康診断などでも異常はなかったと言うから、
まさに突然の不幸である。
前半部は、倒れてから、異郷の地での病床生活、そして帰京して
からのリハビリ生活が、時に激しく、時に微妙に揺れる心の動きと
ともに、克明に描かれている。
突然に降りかかった不幸を、何とか受け止めて、前向きに生きよう
とするプロセスは、圧倒的なリアリティをもって読む者の心に
迫ってくる。
「受苦ということは魂を成長させるが、気を許すと人格まで破壊
される。私はそれを本能的に免れるためにがんばっているのである」
という言葉にも説得力がある。
また、闘病生活の中で、自身が医学者でありながら気付き得なかった
日本の医療体制の不備をも指摘している。
「大体このごろの医者は、患者の顔を見ようともしない。パソコン
のデータを覗き込んでこちらを振り向かない。…愁訴を持っている
患者は目の前にいるのだ」という指摘に同感する人も多いだろう。
オレもそういうことが1度だけあった。
でも、その逆もある。
オレの愁訴をよく聴いた上で、素人にもわかりやすく病理や治療法、
薬の効用・副作用、さらには想定されるリスクや予後のことまでを
説明してくれるお医者さんもいる。
それと、この本の中に、庄内の実業家・新田嘉一氏との交流も書かれて
いる。いわゆる「新田嘉一コレクション」と呼ばれる絵画芸術を
通じての交流だ。
多田氏は新田氏との対面第一印象を次のように書いている。
「新田さんは、うわさにたがわず無口で頑固そうな、含羞に満ちた
庄内の男だった。しかし、一目でものを見通すような眼光の気迫は、
並ではなかった。強い破壊力を秘めた、不発弾を見てしまったような
気がした」と。
この本を読みすすめていくと、題名の意味も明らかになってくる。
しかし、多田氏のようなケースは、いつなんどき、何人にも起こり得る
ことである。
もしオレだったらと思うと、身の竦むような思いがするとともに、
多田氏のように生きられるのかと自問させられる。
2010.08.02:ycci
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