天地人
▼見てる坂は登れない!?
すこし前に、「見つめるナベは煮えない」ということを書いた。
つまり、まだか、まだかと思いながら事を待っていると、
それが長く感じると言う意味だろう。
それを言い換えると、「見てる坂は登れない」とオレの場合は
なる。
登り坂にさしかかると、その頂上を見ながら走ると遅々として
進まずイヤになってしまう。そこで、一計を講じてみた。
頭を下げ、足元をみながらひたすらこぐ。
そうすると、時間と登坂距離の見通しの関係が切れて、何となく
精神的にラクになる、ような気がする。
人生すべからくそういう傾向があるかもしれない。
先の困難な道のりばかりを見て(考えて)いると、チャレンジ
精神が徐々に萎えてくる。少し、先が見えない方がいいのかもなあ。
ん、何のはなし?
File No.148
『生きる意味』上田紀行(岩波新書 740円)
オススメ度★★★☆☆
昔からオレのような凡々人は秀才に弱い、ことになっているらしい。
でなきゃ、こんなベタな(失礼!)タイトルの本はまず買わなかった
ろう。
先日、生まれて初めて東京工業大学のキャンパスに入る機会があった。
ここは、わが国の理工系の秀才が集まる大学らしく、それだけでも
オレには縁遠く、畏怖の対象ですらあった。
そして、菅首相もここの出身とのこと。
どおりでキレるお方だ(キレすぎると前首相は言ってるが)。
で、おそるおそる大学内の本屋さんに入ってみたら、案の定、
理工系の難しそうな本がズラリ。
そこはスっとばして、文庫・新書のコーナーを見たら、
「東工大生に一番読まれている新書」というPOPが目につき、
思わず買ってしまったのが、この本。
読んでいくうちに、なんでこの本が東工大生に一番読まれている
のかがわかった。
この著者が東工大の先生なんである。(なあ~んだ)
それも、学生評価によるベストティーチャーにも選ばれたことも
ある人気の先生らしい。
この著者の専門は文化人類学、つまり文系。
理工系の大学で、文系の先生がベストティーチャーに選ばれたの
だから…。
読んでいくと、確かに面白い、というよりも心に響いてくる。
それは、著者自身がノイローゼになって大学を留年してまで
悩みぬいた実体験があるからだろう。
そうした体験を踏まえたメッセージをわれわれに贈ってくれて
いる。
小さい時から与えられた価値観から抜け出せない自分、生きる
意味を見出せないと思っている人は、ぜひ読んでみるといいかも
知れない。
「世界にはいたるところに中心があり、その中心どおしがお互いを
尊重し合う社会への道がそこにある。与えられた『生きる意味』を
生きるのではなく、ひとりひとりが自分の人生の創造者となるよう
『生きる意味』を再構築していくことは、私の尊厳とあなたの尊厳を
ともに回復していく歩みなのである」
これをキレイ事だとか、理想論だとかで片付けてしまうとしたら、
それこそ救い難いことだと、オレは思う。
オレ的な単純な結論は、これからも自転車だけでなく、自分の
心が自然にワクワクすることに積極的に関わり、その人間関係の
中で「生きる意味」を深化させていくこと。
かなり自分に都合の良い解釈ではあるが…。
2010.06.12:ycci
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