天地人

▼「お手軽」ばっかじゃない

昨日も今日も、早朝に目が覚めてしまった。
寝るのは1時頃なのに…?
疲れてないわけじゃないのに…?
愛車が、「早く起きて1週間分乗ってくれよお」と言ってる
ような幻聴さえ感じる始末。
その愛車に、ようやっと、しかも密かに命名した。
その名は「ビーグル・ブルーU」。
ダーウィンがその偉業の端緒となる世界航海に出た時の船が
「ビーグル号」。
そして、オレの愛車の色が「マリン(キャンディー)ブルー」の
2台目。
つまり、ブルーの自転車で、今まで知らなかった風の世界へこぎ出し、
自分自身の新たな境地を拓いてゆく、という意味と願いを込めたもの。
ちょっとカッコ良すぎかなあ…と考えてたら、目の前に段差が!
急停車したは良かったが、右足をペダルから外すのがわずかに遅れ、
そのまま横転してしまった。
場所は高畠駅前で、何人かに無様な姿をしっかり見られてしまった。
チョーはずかしい〜。
でもケガしなくて良かったあ。
カッコより安全運転第一だな。

File No.140〜143
『不毛地帯(一)〜(四)』山崎豊子(新潮社 970円〜1100円)
オススメ度★★★★☆

去年の秋から今年にかけて、フジテレビ系列で「不毛地帯」を
やっていたらしい。
らしい、というのは、殆どテレビドラマを見る機会がないので、
知らなかったということ。
それでも、酔っ払って帰ってきて、お茶漬けすすりながら1、2回
何気に見たような気はする。
確か、だいぶ以前に読んだ気もするが…、と思いながら、後日本棚
を探してみると、あった、あった。
発行日を見ると、昭和51年8月20日。今から34年前。
(だから単行本なのにこの値段)
もちろんオレではなく、亡父が買ったものだろう。
それを、マセたつもりで読んだのかも知れない。
これを初めて読んだ当時、オレはかなり感化されて、
新聞の連載特集「三井物産」を切り抜きして読んだりして、
オレも世界をまたにかけて活躍する商社マンになりたいなあ、
と机の上の参考書にヨダレたらしながら夢見てた。
まあ、ひとときの居眠りの夢に終ってしまったことは言うまでも
ないことで…。

閑話休題。
この「不毛地帯」は、主人公壱岐正が、大本営陸軍作戦参謀で終戦を
迎え、関東軍に終戦を告げに行ったまま、旧ソ連軍に捕まり、その後
11年もの永い年月に亘り、シベリア抑留という辛苦を味わう前半部。
帰国後、近畿商事に入社し、政府の次期主力戦闘機をめぐる国際商戦
の渦中に入ったり、日米の自動車会社提携の斡旋に動いたりと、
商社マンとして活躍し出す中盤。
そして、イランでの石油掘削に最後の仕事を賭け、ワンマン社長
大門一三に引退の引導を渡すというクライマックスを迎える後半部。
なんと、原稿用紙5000枚にも及ぶ大長編で、戦後の高度成長期と
ともに、企業戦士として激烈な商戦を戦い抜いた男の一生が描かれ
ている。
実はこの小説、実際のモデルがあると言われている。
主人公の壱岐正は瀬島龍三、近畿商事は伊藤忠商事が、それぞれ
モデルとなっているらしい。
瀬島龍三と言えば、伊藤忠商事会長、東京商工会議所副会頭などの
要職を務め、実力者として政官財界に広くその名を知られた人物
である。
もちろん、創作している部分も多いだろうが。
全編を通じて彩りを添えているのが、秋津千里の存在である。
壱岐の陸軍時代の元上司の娘にして陶芸家の彼女は、妻子ある壱岐に
ひそかに想いを寄せ続けていく…。

この本を読み始めたのは4月はじめだから、読み終えるのに1カ月
以上もかかった。
でも、毎晩寝床で30分ほど読むことが日課となり、オレにとっては、
さながら毎日連続ドラマを観る(読む)ような楽しみな時間だった。
一気に読むのもいいが、長編を少しづつ毎日続けて読むのも、また
違った楽しみがあるもんだ、と改めて知った次第。
いつも、新書や文庫本など、いわゆる「お手軽」に済ませてしまう
ことも多いが、年に何回かは「重厚長大」な書物に没頭したいものだ。

蛇足ながら…。
本を読み終えてから、どうしても映像を観てイメージを補完してみたく
なり、かなり昔の映画版「不毛地帯」のDVDを借りてきた。
主演は仲代達矢。
ん〜、ちょっとオレのイメージとは違うかもなあ。
これだったら、唐沢寿明の方がいい。
佐藤浩市だったらもっといい。
渡辺謙だったらもっともっとオレのイメージに近い。
佐藤浩市は「官僚たちの夏」に出たし、渡辺謙は「沈まぬ太陽」
で好演した。そういうイメージもあるのかも知れないが…。
映画でもっとガッカリしたのは、物語が小説の半分ぐらいで終って
しまっていることと、秋津千里が全然出てこないこと。
DVDを観てしまったこと自体が「蛇足」だったみたい…。

2010.05.09:ycci

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