天地人

▼どうしてもない!?

この本読んでたら、以前読んだ佐野眞一の『渋沢三代』と
比べてみたくなって、部屋のあちこちを探したんだが、
どうしてもない。見つからない。
歳のせいか、あんまり探し続けていると、イライラして
きてアッタマ痛くなる。
そのうち、本屋で探していた別の本が隅っこにあったりして、
あまりの整理力のない自分にブチキレて……
その後はお決まりのフテ寝。
目が覚めたら少しはオトナになるのかしら。

File No.122
『岩崎弥太郎と三菱四代』河合 敦(幻冬舎新書 780円)
オススメ度★★★☆☆

このごろ、新書ばっか多く読んでるような気がする。
それは、近年、新書のラインナップが充実してきたせいも
あるだろう。
たった200頁前後で、一流の専門家だったり第一人者らが
それぞれの世界の面白さを、初学者にもわかる平易な内容で
且つコンパクトにまとめてくれてるのだから、ありがたい。
休日2〜3時間の「知」の旅は、なかなか面白い。

で、この本は、三菱の創始者岩崎弥太郎から、その弟弥之助(二代)、
弥太郎の長男久弥(三代)、そして弥之助の長男小弥太(四代)
と続く、三菱・岩崎家の草創期の史話である。
岩崎弥太郎って、「龍馬伝」観てる人はわかるよね。
香川照之が好演している、回想ナレーションもつとめている
あの多情多感な人物。
この男こそが、土佐の一介の地下浪人(藩士の身分を失った武士)の
家に生まれ、刻苦勉励し、毀誉褒貶の中にも常にポジティブな行動で
大三菱を創始した立志伝中の岩崎弥太郎である。
龍馬との関係性は、いつものごとく脚色されすぎている大河ドラマ
ほど劇的でもなかったようだ。
龍馬の「海援隊」に、土佐商会の主任者だった弥太郎は金をやり繰り
し続け、だいぶ煮え湯も飲まされて、かなり厄介者扱いだった
らしい。
ご存知のように、三菱の初期は海運業で名を馳せていく。
大隈重信らとの太いパイプで結ばれながら業績を伸ばしていくことを
快く思ってなかった薩長閥の政府が、共同運輸という海運会社を
つくり、三菱を潰しにかかる。
このあたりのことを、たしか『渋沢三代』にも書いてあったハズと
思って、かの本を探したというワケ。
三菱と共同運輸の死闘が繰り広げられるが、そのさなかに弥太郎は
胃がんを患い、52歳の若さで壮絶な死を遂げてしまう。
その跡を継いだのが、弟の弥之助。
兄とは対照的に温厚沈着な性格で、三菱の第二(真の)創業者と
言われている。
と言うのも、先に書いた三菱と共同運輸の死闘は、弥之助の英断と
根回しによって、合併という結末に落ち着くのである。
つまり、弥太郎の三菱商会は、合併した日本郵船に吸収されたのである。
この後に、改めて弥之助が三菱社を興し、銅山・鉱山・造船・銀行・
不動産など、「陸」中心の事業を多角化し、今の三菱グループの
礎を築いた。
弥之助が第二(真)の創業者と言われるゆえんである。
この二代目弥之助は、42歳という若さで、社長の座を甥の久弥に
禅譲してしまう。
身の振り方が鮮やかで清々しい。

もうひとつ興味深かったことを。
当時のライバルたちを端的に評している箇所がある。
三菱が岩崎家の独裁的経営なのに対して、三井は役員による複数支配、
いわゆる番頭政治、渋沢栄一は合本組織(今の株式会社のようなもの)
を志向したと言う。

三菱四代のことを詳述するとかなりのボリュームになるハズだが、
それをコンパクトに通読できる好著である。
ただ、ところどころに、著者の教訓がましい記述が挿入されていて、
ちょっと邪魔くさいカンジはするが…。



2010.02.28:ycci

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