天地人

▼徹底したリアリズム

過日、山形美術館で「土門拳の昭和」を観てきた。
徹底したリアリズム。
圧倒的な迫力。
入館料800円は高くはない。
そう言えば、以前、酒田の「土門拳記念館」に行った時に
買った本があったハズ…。

File No.109
『死ぬことと生きること』土門 拳(築地書館 1854円)
オススメ度★★☆☆☆

あった、あった。本箱の奥の奥のほうにひっそりと。
読んだんだっけがあ〜?
って思いながらページをめくってみると、記憶にあるような、
ないような…。
まあ、もう一度軽く読んでみようかと思い手にとった次第。
この本は、1950年代頃にあちこちに書いたものと、
書き下ろし(未発表)のものをまとめた、言わば写真家の
随筆集。
土門は、今から100年前に酒田で生まれた。
父母と離れ、そして転居を繰り返す極貧の幼少期からの
思い出や、写真家としての気構え、その感性などを、
明治人らしい男性的な筆致で書いていて興味が尽きない。
しかし、写真家は文章よりもその作品(写真)を良く
見た方がいい。
当然と言えばトーゼンだけど…。
というワケで、「土門拳と昭和」のオレなりの見どころを
ふたつみっつほど。
ひとつ目は、土門拳と言えば真っ先に連想される室生寺を
代表とする古寺巡礼。
土門は、日本人である自分が日本を発見するため、知るため、
苦しい古寺巡礼の旅を続けた。
仏像の写真群もド迫力だが、「ようやくこれで室生寺を卒業した」
と言わしめた、肢体不自由になってから必死に撮った室生寺の
冬景色がオレは一番好きだ。
ふたつ目。
土門は子どもたちも良く撮った。
「筑豊のこどもたち」「江東のこどもたち」などの作品群である。
なかでも、「るみえちゃんと妹」は白眉!
姉の不安な表情と、妹のはにかんだ表情の好対照さ。
ちなみに、この作品群の中には、男の子の坊主頭にヤモリが
ちょんまげのように乗っている抱腹絶倒の作品もある。
みっつ目が、有名人の肖像写真群。
赤痢菌を発見した有名な医学者・細菌学者志賀潔の肖像は
ウワア〜ってかんじ。
教科書なんかにはバリっとした写真が載っているが、土門の
作品は、丸メガネの片方をテープで補修して掛けている
晩年の志賀潔。
えも言われぬ個性的な風貌に思わず魅入られる。

この本もさることながら、「土門拳の昭和」はオススメだ。
らくらく2時間は楽しめる。

2010.01.12:ycci

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