天地人

▼立ち食いそばが好き

立ち食いそばってフシギだなあ。
駅や街角で、あのつゆ(醤油?)のにおいが漂って
くると、時間にかかわらず無性に食いたくなる。
たぶん、屋内でちゃんと座って食うと、そんなには
美味しくないだろうと思うのだが(失礼!)、
あの状況で食うと、なぜかウマイ。

File No.101
『偉いぞ!立ち食いそば』東海林さだお(文春文庫 562円)
オススメ度★☆☆☆☆

今回はちょいと軽めに、と思って選んだのがこの本。
東海林さだおサンを、以前、米沢に呼ぼうと画策したことがあって…。
熱烈な?お願い状を送ったんだけど、みごと無視された。
たぶん、相当に多忙を極めている人なんだろうねえ。
というか、書いてるエッセーなんかは軽妙洒脱のようだが、
けっこうこだわりが強く、気難しい人なのかも知れない。
でなきゃ、立ち食いそばひとつの話題で、こんなに細かく
書けないだろう。
主となる内容は、「富士そば」(立ち食いそばのチェーン)の
全メニューを制覇しようというもので(どこかのTV番組みたい)、
漫画と細々としたエッセーでつづられている。
最初のうちは、まあまあ面白かったし、「そうそう、それって
あるある」ってカンジで、寝っころびながら、それなりに
楽しめた。
が、中盤ぐらいになると、いいかげん飽きてきた。
こんな調子が延々と続くのか、と。
そしたら、行きつけの「富士そば」西荻窪店が改装して、
着席型の店舗になったため、あっさり断念。
やれやれ、というか、なあ〜んだ、というか…。

この本を読んで思いを新たにしたんだが、やっぱオレは、
衣食住にこだわらない男が好きだ、というか、尊敬する。
ヨレヨレの服着て、デロデロの靴はいて、何食ってもウマイも
マズイもなく、家は雨風しのいで寝れればいい、ってなスタイル。
NHKのスペシャルドラマ「坂の上の雲」の秋山好古は、
「男は一生に一事を成せば良い。だから身の回りは単純明快に
しておく」と言って、独身時代しばらくは茶碗ひとつの生活
だった。つまり、酒飲むのも、ご飯食うのも、お茶飲むのも
ひとつの茶碗。もちろんオカズなんてものは満足になく、
せいぜいタクワンや味噌なんかをご飯の上に載せてかっこん
でたんだろう。
カッコ良すぎる!
オレ自身、俗な欲を断ち切れないでいる凡庸な人間だけに、
そういうストイックさに憧れるのかもしれない。
立ち食いそばなんか、「こだわらない男」の際たる食べ物だと
思うのだが…。

この本で興味をひかれたところもある。
それは、冒頭の「駅弁『奥の細道』」と、最後の黒川伊保子サンとの
対談。
前者には、なんと米沢の駅弁がいくつも出てきて、作者も好評価。
後者の黒川サンは『怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか』で一躍有名
になった人。サシスセソなどのS音には爽やかさを感じ、T音に
確かさを感じ、H音で解放され、N音で慰撫され、K音で鼓舞される
との指摘はスゴイ面白い。
何かに使えるゼ、この「サブリミナル・インプレッション」。
近いうちに読んでみよっと。
2009.12.23:ycci

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