天地人

▼「天地人」が終わって…

「天地人」が最終回を迎えた。
なんだかんだと評価はいろいろあったものの、
TVドラマとしてはまずまずだったのでは。
(地元としては無難なコメント!?)
最終回はとくに良かったねえ。
で、ドラマの中で不敵な役柄となった伊達政宗だが、
今秋、地元作家鈴木由紀子さんが書き下ろし新刊を上梓。
だいぶ以前にご本人からメールいただき、すぐ購入したのだが、
ようやっと今読み終えた。
「おおっ!」ってカンジ。

File No.91
『黄金のロザリオ』鈴木由紀子(幻冬舎 1500円)
オススメ度★★★☆☆

この本の副題は「伊達政宗の見果てぬ夢」。
伊達政宗と言うと、以前に大ヒットした大河ドラマ「独眼流政宗」の
原作となった山岡荘八の『伊達政宗』が超有名。
オレもむさぼるように読んだ記憶がある。
今回の鈴木さんの本も、女性や脇役、世事などを織り込んだ焼き直しか
と思いきや、後半から終章にかけて「おおっ!」と思わず感嘆する
ような展開が待っている。
それをここで書いてしまってはネタばらしになってしまうので、
さわりだけひとつ。
政宗は確か実母に毒を盛られて殺されそうになったり、血を分けた
弟を誅殺したことになっているけど、実は…?
さすが鈴木さん、あくなき史料の渉猟によって、新たな史観を目の前に
見せてくれた。
史料を読み解く目もさることながら、人間に対する深い洞察がなければ、
書けない内容でもある。
そう言えば、伊達騒動をモチーフにした『樅の木は残った』を書いた
山本周五郎にも深い洞察力と独特の人間観があった。
それが読者を惹きつけて止まないのである。
それにしてもこの伊達政宗という男、まさに波乱万丈の人生をおくった
んだなあって改めて思う。
隻眼になって実母から疎まれ?、実父を見殺しにし、弟を誅殺し?、
秀吉や家康とギリギリの駆け引きをしながら、南蛮との交易で新たな
活路(天下とり)を見出そうとし、果ては、愛娘の婿忠輝(家康の息子)
を失脚させてしまうハメになる。
そして有名な「馬上少年過…」の漢詩に見られる潔い諦観と、広遠なる
人間感情。
きっと気宇壮大な男だったんだろう。
よく言われるように、もう少し早く生まれてきたら、もしかすると
天下をとった男だったかもしれない。
「天地人」が終わって、少し寂しげになった夜にでもぜひ一読を
おすすめしたい。
カバーデザインがオレ的にはいただけなかったので三つ★にしたが、
中身は四つ★級だよ〜ん。


2009.11.23:ycci

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