天地人

▼この愛しきもの「鯨」

クジラって昔も今もごちそうだよねえ。
小学校の時、給食で「クジラの竜田揚げ」が出た時なんか
「ラッキー!」って感じ。
今は捕鯨の禁止で高級食材になってしまって、たまにしか
食べられないけど、やっぱおいしい。

File No.75
『宮本常一とクジラ』小松正之(雄山閣 2000円)
オススメ度★☆☆☆☆

なあ〜んだ、世界にはクジラはまだまだいるじゃん。
地球最大の動物シオナガスクジラはさすがに少なくなって
いるが、マッコウクジラは200万頭、ミンククジラは94万頭も
いると推計されている。
クジラは全部で86種あり、そのうち15種が大型鯨類とされ、
捕獲禁止の対象となっている。
捕獲禁止なのに、なぜオレたちの口に入るのか?
それは、国際捕鯨取締条約の加盟国の権利として調査捕鯨が
認められているから。その数は、南氷洋で1000頭、北太平洋で
380頭。この調査捕鯨の副産物として鯨肉をマーケットに
流している。その売上約60億円は、ちょうど調査捕鯨に要する
額だそうだ。
つまり、安くしたんじゃあ調査捕鯨も出来ないというワケ。
でも、なんでこんなことになったんだろう。
日本は縄文の昔から鯨食の習慣があった。
生きとし生けるものを尊びながら、クジラをほぼ100%食べ尽くす
のは日本だけである。
日本各地に残るクジラにまつわる伝統文化を、宮本常一(民俗学者)
の『忘れられた日本人』(以前No50で紹介した)などの各地渉猟調査の
あとをたどりながら記録にしたのが、この本である。
趣向やその気持ちはよくわかる。
でも、宮本常一の著作を読んだことのない人や、その仕事を知らない
人には、この本の趣向もよくわからないであろう。
かりにも、人に読ませたいという気があるなら、宮本常一のことを
もっと丁寧に説明しなくてはならないと思うのだが…。
あと、文章や構成がちょっといまいちなので、その世界に引き込んで
いく力があまり感じられない。
宮本常一の全国調査行脚が鬼気迫るものがあったのに対し、この
オッサンのはちょっと旅行気分みたいな…。
「宮本常一」も「クジラ」もオレの興味関心の対象なので、実は
スゴク期待して読んだんだけど、ちょっと期待はずれ。
2009.09.13:ycci

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