天地人

▼同時代感覚なのか!?

杉山隆男は、私がまだ20代の頃、その出世作『メディアの興亡』を
読んで、衝撃的とも言える面白さと、同時代的な共感を覚えた
ノンフィクション作家です。
その後の『兵士に聞け』『兵士を見よ』も圧巻の内容でしたが、
今回も期待を裏切らないものでした。

File No.42
『自衛隊が危ない』杉本隆男(小学館101新書 735円)
オススメ度★★★★☆

「ぶっくぶく」始まって以来の四つ★です!
このまま四つ★、五つ★が出なかったら在庫の棚卸ししかないかなあ、
とも思っていたのですが。
最近も、田母神・前航空幕僚長の懸賞論文問題や北朝鮮のミサイル
(人工衛星?)発射問題、イージス艦と漁船の衝突事件などなど、
自衛隊を巡る問題・事件があとを絶ちませんね。
この本は、著者の長年に及ぶ自衛隊取材をベースとして、自衛隊自体
の課題や問題、取り巻く環境などを論じた秀作です。
第一章で語られる、「ビロードの手袋をはめた鋼鉄の拳骨」や「刀を
帯びているものの克己」の話は、騎士道や武士道のようなストイック
好きの私には、とても共感できるものです。
(私自身の精神や生活はストイックとはほど遠いものですが…)
つまり、力があったり、武器を持っていたりする人間は、普通の人間
より感情抑制しなければならず、その力(武器)をむき出しにして
行使してはいけない、ということ。
また、旧軍から続く、陸海空軍(自衛隊)の特徴を四文字熟語で端的に
表現しているというのも、なかなか面白いですよ。
ちなみに、
陸上自衛隊=用意周到、一歩後退
航空自衛隊=勇猛果敢、支離滅裂
海上自衛隊=伝統墨守、唯我独尊
というものです。
さらに、最終章では、未確認情報としながらも、陸上自衛隊に特殊作戦群
と呼ばれる対テロ・対ゲリラの特殊部隊が秘密裡に組織されている、との
ショッキングな内容も盛り込まれています。
「自衛隊を憲法で定めることが実は護憲になるのではないか」という
アイロニーとパラドックスに満ちた問いかけは、私の胸にも強く響き
ました。
そういった本書の内容もさることながら、筆者には私と同時代的感覚と
いいますか(実際は私の方がずっと年下なんですが)、考え方が似ている
というか、そういう親近感を勝手に感じておりまして…。
例えば、全共闘世代の「兄貴」たちを、羨望・尊敬・反感・憎悪という
複雑な感情で、少し距離を隔てている同じ「弟分」の気持ちとでも
言うのでしょうか…。
まあ、簡単に言えば、「個人的な好み」の四つ★ということです!
2009.04.26:ycci

HOME

(C)

powered by samidare