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朝顔の浴衣
先日、お墓参りに行ってきました。ご先祖さまの眠るお墓を掃除したりお花をお供えしたりして、霊を慰めました。
お盆には、亡くなったおじいちゃんやおばあちゃんがお家に帰ってくると言われていますが、私の家は核家族なので誰も帰っては来ません。
学生時代の友人から昔、不思議な話を聞いたことがあります。
その友人の家は何百年も続く造り酒屋だそうで、お盆には親戚がたくさん集まり、広いお庭で迎え火を焚き、お酒を呑んだり、盆踊りを踊ったりして、先祖をお迎えするのだそうです。
友人が幼稚園生くらいだったお盆の夜のこと、親戚中が集まり盆の宴が催されている中、友人はひとり母屋で眠っていたそうです。ラジカセから流れる祭り囃子が家の外から微かに聞こえていたり、酒の入った大人達の声が賑やかだった為、ふと目が覚めてしまったのだそうです。
すると誰かが箪笥を開けて何かを探っているのが目に入ったそうです。こちらに背を向けて、衣類を出して広げてみては、またしまったりしているのだそうです。
「誰?おかあさん?」友人がそう話しかけると、ゆっくり振り返ったその顔は仏壇に飾られた祖母の顔だったのだそうです。外から漏れる僅かな灯りに白髪がキラキラと光っていたのを覚えているといいます。
「盆踊りに毎年着てた浴衣がない…」
おばあちゃんは、どうやら浴衣を探しているようでした。
「朝顔の浴衣…」
翌朝目が覚めると、友人は、母親から箪笥を荒らしたでしょうと叱られたそうです。箪笥が開け放たれていて、衣類がグチャグチャになっていたのだそうです。
昨夜の出来事を母親に話すと、母親は驚き、祖母の死後、祖母の遺品はみなまとめて倉の中にしまってしまったと言ったそうです。祖母がいた頃は、朝顔の浴衣は、確かにその箪笥にしまってあったのだそうです。
それから友人の家ではお盆になると、朝顔の浴衣を玄関先に掛け、祖母を迎え入れるのだそうです。
2006.08.21:
Koyomi
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