FPのひとりごと

▼イノセントI

 『いらっしゃいませー!』



従業員の大きな声に迎えられたMとポンタ


ウィークデーの『北の家族』は満席に近い状態だったが


窓際の小上がりだけが ぽつんと空いていた


迎えあわせに座った二人に 従業員がオーダーを取りにやってきた



 『なに飲む?』 とM


 『Mクンとおんなじもの』 とポンタ


 『じゃあビール! と枝豆とヤッコと焼き鳥 塩で』『いい?』 とM


 『いいけどー あたしがおごるのに 勝手に決めちゃってー』 とポンタ


口を尖らせてはいるが 顔は笑っている


 『ゴメン いつものクセが出ちゃった』


 『冗談 冗談 そのペースでどんどんいっちゃって』



ビールが運ばれてきて お互いにグラスに注ぎ合った



 『Mクン 乾杯の前に これだけはアタシに言わせて!』


 『今日は ホントにありがとう!』


両手でグラスを持ったポンタが 真正面のMをじっと見つめた


 『なんだよ てれるじゃないかよ』


 『それに せっかくの冷たいビールが温くなっちゃうし・・』


 『いいの!』


 『今日は ホントにありがとう!』


 『アタシ 今日のこと 一生忘れない ありがとう・・』


 『まあ その こっちこそ・・』


 『いいのよ 無理しなくたって ちゃんとわかってるから』


 『いや 無理してるわけじゃなくって なんか・・・』


 『なんかってなんなの?』


 『うーーん なんか もやもやしてるような・・』


 『それってどんな気分なの? どこがもやもやなの?』


 『わからない でも なんかヘンな気分なんだよなあ・・』


 『うれしい もうそれだけで十分』


 『意味がわかんない』


 『いいの!』



そう言うと なにか言いたげなMを無視して 



 『カンパ〜イ!』 と勝手に宣言したポンタ



呆気にとられるMに 精一杯の笑顔で笑いかけた


その笑顔に どきっとして(『やばい』)と心の中で呟いたM


でも なにが“やばい”のかはわからなかった そのときは 
2014.04.09:tnw

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