FPのひとりごと

▼あのころほしかったものF−ステレオ物語〈5〉

スピーカーの箱として
私が最終的に選んだのは 机の引出しでした
苦渋の選択と言うか これしかなかったというか・・
親に見つからないよう 机に布をかぶせて偽装工作
ステレオへの道は かように遠く困難なものでした

引出しの底部に糸鋸で丸く穴を開け
フルレンジスピーカーをビス止めし
古い座布団を失敬し 中の綿を遮音材として詰め
結線して ベニヤ板で蓋をしました
いま考えれば なんとちゃちースピーカー
でも
とにかく なんとか“スピーカーのようなもの”が
たいへんな労苦とともに 完成したのでした
レシーバーを買ってから 既に3ヶ月が経過していました
ステレオサウンドに対する渇望は もう沸点に達していました

いよいよ竣工式です!!
レシーバーの電源をONにし
FMのチューニングをNHK・FMに合わせ
ボリュームを一気に中段までアップ

二つのスピーカーから
荘厳なクラシックが流れてきたんです!

ああ〜 音が 音が 広がってる!
これが これが これが  ス テ レ オ !!
あまりの感動に 血沸き肉踊りました
左のスピーカーから管楽器の音がして
右のスピーカーから弦楽器の音がしたときには
目からうろこどころか 目そのものが落ちそうになりました
一生忘れられない感動的なシーンでした

変な言い方ですが・・
この時代には 今の時代にない
“ものがない”という幸せがありました
なんでも金さえあれば手に入る時代では
決して味わえない 物に対する感動がありました
いまから見れば ほんのつまらないものでも
苦労して苦労して手に入れたものには
このうえない愛着があり 大事に大事にしました

もしかして いい時代を生きてきたのかなー
そんな思いをする 今日この頃です

                 (つづく)



2008.12.11:tnw

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