FPのひとりごと

▼イノセントH

人込みに 完全にカップルとして馴染んでしまったMとポンタ


二人は 映画館を出て 駅の方に並んで歩いていた


早春とはいえまだ3月 夜ともなればぐっと冷え込む


軽装のポンタが 寒さに思わず肩をすぼめた


Mが 着ていたダウンジャケットをポンタの肩にかけた


Mにとっては ごく普通のことであった



 『優しいねMクン・・』


 『彼女にもそうするの?』 と笑顔のまま聞いてみたポンタ


 『彼女にねえ・・ あんまり意識したことないね そういうこと』


 『ふーーん』 と なにかを納得したようなポンタ



その思いを吹っ切るようにして



 『Mクン どこがいい おごっちゃうから』 とポンタ


 『よかったー もう帰りの電車賃ぐらいしかないし・・』とM


 『じゃあ あそこ!』



と 目の前にある『北の家族』を指さした



 『北の家族?』


 『北の家族!』


 『あれ なに屋さん?』


 『大衆居酒屋!』


 『大衆居酒屋?』


 『入ったことない?』


 『入ったことない!』


 『じゃあきまり!』



Mがポンタの肩に手を回して 一緒に通りを渡った


Mにも なにかくすぐったいような妙な感情が芽生え始めていた
2014.04.07:tnw

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