イノセント③:ＦＰのひとりごと

ＦＰのひとりごと

▼イノセント③

もう二三日で４月というぽかぽか陽気の新宿

奇妙な縁で俄かカップルとなったＭとポンタ

二人は新宿東口のフルーツパーラーの前で待ち合わせた

Ｍはほぼ時間通りにやってきた

Ｍが人通りに背を向けたポンタを見つけた

ポンタに声を掛けようとしたＭが　ちょっと逡巡した

昨晩の雰囲気と全然違っていたから・・

人違いと思って　Ｍが背を向けた時だった

　　『なんだよー　あたしだよ！　ポンタ！』

ポンタはショーウィンドウでＭの到着を確認済みだったのだ

　　『うおっ　なんだ　そのヘアスタイル！！』

　　『美大の女子大生風にしてみたの』

　　『　・・・　』

きのうの夜　ライブハウスにいたポンタはストレートのセミロングだった

それなのに目の前の彼女は　チリッチリのカーリーヘアになっていた

しかもオーバーオールににカントリーシャツに白いスニーカー

Ｍがあかの他人だと思うのもやむを得ないぐらいのイメチェンだ

　　『なんなの　それ？』

　　『Ｍクンに合わせてみたの』

　　『なんで？』

　　『だって・・・』

　　『　・・・　』

　　『はらへった！　なんか食おうぜっ！』

　　『アタシも～』

　　『吉野家でいい？』

　　『いったことなーい』

　　『じゃ　行こう！』

先に大股で歩きだしたＭをポンタは小走りで追いかけて

　　『待ってよ～』　と言いながらＭの左腕に自分の腕を回した

　　『やめろよ！』

　　『いいの！』

いやがるＭを完全にシカトしたポンタが今度はＭを引っ張った

心地よい春風が二人に向かって吹いていた
2014.03.26：tnw

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