FPのひとりごと

▼府中刑務所奇談D

ガス屋の事務所は刑務所の門(出口)のはす向かいにあった
府中街道側にある窓からは 出口の様子が丸見えだった
別に“その世界”に特別に興味があるわけでもないので
その世界の人脈を探らんと監視していた などということは勿論ない


ある日 三十代中盤くらいの男性が我が社を訪ねてきた
名刺を見てビックリした

  『 警視庁 ○○課 刑事 ○○○○ 』

警官とすれ違うだけでも なぜか後ろめたくなるのに
私服の警視庁の刑事が直接いらっしゃるっていうのは
私を硬直させるとともに メモリーをフル動員して悪事を洗い出した
が なにもない あっても麻雀くらいだが そんなに高レートではない
では なんなんだろう・・ などと思いを巡らしていると

 『道路側の部屋をちょっと貸していただけませんか』 と

詳しくは語らなかったが 本日の出所のメンツ確認のようであった
自分への用ではないことを確認して 強気に転じた私

 『身分証明書を見せてください!』

などと 偉そうに要求をした
初めて警察手帳というやつを見せてもらった
“ふーーん”みたいな顔はしていたが 本音は“ワーオ!”だった
警察手帳を取り出すとき 革ジャンの内ポケットから取り出したのだが
その際 腰のベルトにぶら下がっている拳銃がチラっと見えた

“ウワッ!”  “スゲッ!”

当たり前だが 正真正銘 本物の警視庁の刑事だった
中肉中背だが 肩幅は広く 剣道の高段者と見た
髪は若干長めで 口ひげを生やし 黒縁メガネをかけていた
雑踏にいれば紛れてしまうような佇まいだが 眼光は鋭かった

刑事さん 朝からいらして暗くなるまで“張って”いた
途中 お昼に出前を所望された以外は 一切接触はなかった
仕事と言ってしまえばそれまでだが なかなかである

結局 狙いが“怖い系”か過激派系かはわからなかった

暗くなって 『お世話になりました』と帰っていった後姿
やっぱプロはちがうね めっちゃカッコよかたぜ!!
2012.01.06:tnw

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