FPのひとりごと

▼雲と泥G

大きな組織の中にいると
自分のしていることが見えなくなることがある
冷静になったり 時間が経つと ちゃんと見えてくるのに
組織の無言の意思や熱(フィーバー)や病に負けることがある


大阪地検元検事の前田恒彦氏
言わずと知れた郵便不正事件の首謀者だ
とんでもないことをした彼に肩入れする気はないが
でも 彼が犯罪にまで手を染めてしまった心の動き
私には なんとなく理解できるのである

《個人》から見ると・・
彼は広島大学法学部出身だ
広島大学は旧一期校だが 旧帝大ではない
どうでもいいようなことに見えて(実際はどうでもいいことなのだが)
当人にとっては 看過できない(心の)壁がある(実は私にもあった)
法曹界特に検察の世界は 東大・京大が鉄壁の二枚看板だ
そこで“駅弁大学”出身が存在意義を見せるのは並大抵のことではない
これは 実務とか人事評価とかで差別されるという類の話ではない
駅弁大学出身者側からの一方的な精神的コンプレックスのようなものだ

保険会社時代 まわりには普通に東大出身者がいた
先輩にも同僚にも後輩にもいたが 私の前任者もそうだった
営業成績に学閥は無関係なので 私が彼らに負けることはなかったが
営業成績以外の分野では感心させられることが多かった
こんなことがあった
東大出身の業務系の後輩に ある保険の料率計算を頼んだ
私にだってできないことはないが 徹夜は覚悟だった
いろいろ忙しいという言い訳を延々と言って頼んだのだが
快諾して10分も経たないうちに回答のFAXを送ってきた
開いた口がふさがらない私 『なにをどうやったんだ』と聞いてみた
彼は さらっと“表計算ソフト”を使いました と言った
この話 実は20年以上も前の話だ
エクセルなんて聞いたこともなかった時代だ(あったんでしょうが・・)
『Lotus1-2-3』などという表計算ソフトが あるにはあったが
こめんどくさすぎて 方眼紙と電卓の方が便利だった 当時の私には
そんな時代に 文系(教養学部)のくせに さらっと・・である
しかも 私が聞いたから答えたのであって 聞かなかったら言わない
これ 立場が逆だったら 口角泡を飛ばして自慢しまくる 私なら絶対
とにかく 連中の頭の中はクリアだ
例えば なにか演題があって A → E が正解だとすると
スタートのAは同じでも 私では B・C・Dに寄道して時間がかかる
ところが彼らは AからEにストレートに到達する
かなうわけがない
そうすると 目に見える営業成績だけでは負けられないということになる
少々無理な(=イレギュラーな→イリーガルな)ことをしても・・

 
彼にも たぶん そういう“負けられない意識”があったんだと思う
でなければ 誰が考えたって“あそこ”までのことはしない
優秀な人材の中に埋もれまいとする“無用な弱い個のもがき”だ
わたしには“それ”がわかるだけに辛いものがある
2011.06.28:tnw

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