FPのひとりごと

▼どこがええねん・・ 最後に

我が思い出の喫茶店ナンバーワン
それは 『ロア』 だ
(てったって わかるわけないわな)

学生時代のいわゆる“いきつけ”ってやつだ
最初のアパートから歩いて10分位のところにあった
3坪くらいの小さな店で カウンターしかなかった

マスターは いかにも脱サラといういでたち
黒縁眼鏡 口ヒゲ 蝶ネクタイ 黒いパイプ・・
ニット帽&カントリーシャツタイプではなく
どちらかといえば ホテルマン風の服装
ここにも マスターの強いこだわりを感じる
暗めの店内にはいつも渋めのジャズが流れていて
豆は勿論手で挽いて サイフォンから抽出される
もう目一杯“いかにも”の塊のような店だった

コーヒーの味・・
だいたい嫌いなんだもん わかるはずがない
でも“いかにも”の雰囲気を“いかにも”の風情で味わった
小難しい顔で ショートホープを燻らしながら マスターと語らった

私にとってここの名物はピラフだった
チャーハン系と一括りにしていいのか甚だ疑問ではあるが
この系列では 今までの私の人生で間違いなくbPだ
どこにもないスパイシーな風味が魅力の一品だったが
いま考えると 隠し味は醤油とラー油だった気がする
貧乏学生の分際で“外食”などとんでもないことなのだが
せいいっぱい背伸びして週一くらいで通っていた

きれいな奥様がいらして
時間帯によって“交替勤務”をしていた
奥様はサバサバした男のような性格なんで
“変な気”を使う必要がなく 安心して長居できた

ロアは住宅街の喫茶店だった
本来なら主婦層などがメインターゲットになるべきなのだろうが
あの雰囲気に“主婦の昼下がり”は似合わない 絶対に
私が学校サボって昼間に長居してても 客は多くて3人
だいたいが コーヒー一杯でねばるお客がほとんどなわけで
経営的にどうなんだろうなんて 学生の私にさえ思わせた

ある日 アルバイトに向かうバスの中で 奥様を見かけた
彼女は店の近くにある停留所から乗車した 朝の8時半頃だ
私には気付いていなかった
バスは混んでいたので 声も掛けられなかった
彼女は大手スーパーの前で降りて 裏口の方に歩いていった
その頃から 奥様は店に立たなくなった


私が引っ越して 店にいけなくなってから1年後ぐらい
偶然 ロアの前を通りかかったら
看板はおろか店そのものがなくなっていた
残念で寂しい気持ちと“やはり”という気持ちが交錯した

その後 あのご夫婦はどんな人生をたどったのだろうか
もう永遠にわからないことだが  気になる
2011.03.10:tnw

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