FPのひとりごと
▼中庭の学生服@
秋の穏やかな夕方だった
バスケットボールの練習を終えた僕は
練習場である学校の中庭のコートに
制服の上着を置き忘れたことに気付いた
廊下を教室めがけて歩いていた僕は
気付いた途端に きびすを返してコートに向かった
僕がコートの出入り口に近づいたときに
廊下の反対側から少女がゆっくり歩いてきた
少女は僕より二三歩早く出入り口に辿り着くと
ボードの支柱に横に二つ折りで掛けてあった僕の制服を
廊下から手を伸ばして取ると 縦に二つ折りにして僕に返してくれた
『ありがとう』
『どういたしまして』
そして彼女は何事もなかったように通り過ぎていった
僕はしばらく彼女の後姿をぼんやりと見ていた
どうして彼女は僕の制服に気づいたんだろう
どうして彼女はあんなにさりげなかったんだろう
どうして・・・
彼女の華奢な後姿を見つめながら僕は佇んでいた
それは僕の初恋だった
2011.01.18:tnw
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