FPのひとりごと

▼恋の鞘当?!F

その年はやけに暑かった
炎暑が容赦なくお化け屋敷に照りつけた
エアコンなどもちろんあるわけがない
拾ってきた扇風機が唯一の冷房装置であった
あまりに寝苦しい夜はベッドにビニールシートを敷き
全裸になってから水道水を体にくまなくペタペタして
海水パンツだけはいて そのままベッドに横たわった
そうするとほんの一瞬だけ気化熱が奪われ涼しくなった(気がした)

そんな『男おいどん』みたいな生活をしてる部屋に
若い女の子が続々押しかけてくるという夏の椿事が起こっていた
私が急にモテだしたわけではない 悲しいけれど
例の一件が業界に定着→拡大解釈→伝説化(これは大袈裟でした)して
ちょっとした一時退避所 駆け込み寺みたいになっていたようだ
訪ねてくる女の子には『ここが あの・・』みたいに感激してる子もいた

最初の頃は えーい ままよ とばかり成り行きに任せていたが
透けて見えそうなドレスで深夜にいらして 目の前でMYネグリジェに着替え
(この頃になると MY枕 MYマットレス は当たり前になっていたが
それどころか いつのまにか三面鏡とファンシーケースまで置いてあった)
そのカッコのまま差入れのビールとツマミで彼やお店のことを相談される
正直オレにまったく関係のないどうでもいいことなのに どうして??
この部分の“心の声”はまだいい 
問題は 夜中に香水プンプンのうら若きネグリジェの女の子と
パンツ一丁のオレは何故に対峙せなあかんのか ということ
このシチュエーションで“やる”ことがちゃうでしょ! どう考えても
  
来訪者が一人のうちはまだよかった
それが 二人 三人と増えていき 狭い六畳間に最高は7人
そのシーンだけ見れば 人も羨むハーレム状態であるが
実態は油をたらたらたらたら垂らしてカッサカサになったガマだ
夜中にトイレに起きて蛍光灯を点けると 異様な光景を目の当たりにする
うら若き乙女のみなさまが あられもないお姿で 寝乱れておられるのだが
その中で パンツ一丁で立ちすくむオレはいったい何者なんだ
鼻血ですめばいいが 体中の体液という体液がドバーっと噴出しそうだった
ハーレム状態に間違いはないが これじゃ逆の意味でカラダがモタナイ?!


秋風が吹き始めた頃 私は水商売から足を洗った 完全に
知らないうちに三面鏡もファンシーケースもなくなっていた
やっと我が部屋と“下半身”に平穏が戻ったのであった


2010.02.16:tnw

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