FPのひとりごと

▼悲しいウサギA

翌日の登校中
一度だけウサギの話が出たが
“出た”というだけで終わってしまった

そんなこんなで2・3日が過ぎ・・

いつものように日がとっぷり暮れたころ
ブラックホールのような空腹を抱えて我が家に帰ってきた
そしたら 玄関口に あの“ばあちゃん”が立っていた
母親となにごとか和やかに談笑しているのであった
私を見つけた“ばあちゃん”は
『あら〜こないだは おしょうしな(ありがとう)』と言ったので
『どういたしまして』と返して そそくさと家の中に入っていった
なんでもどうでもいいから はやく飯出せ− と言いそうになったが
そんなことでも言おうものなら 最悪“晩飯抜き”が待ってるんで
二人の会話に背を向けて 頬杖ついて“ふて寝”していた

『これ みなさんで食べてください』と言って“ばあちゃん”は帰った
私はてっきり“こないだの御礼”で饅頭でも置いてったのかと思った

やっと家族全員がそろって夕げの食卓となった
ちゃぶ台の真中に見慣れない食べ物が山盛りにあった

  『これ なに?』 って聞いたら

  『ウサギの肉!』 

  『・・・・・・』

おいおい ウサギの肉って ばあちゃんち1匹しか飼ってなかったよな
つーことは・・ おれが捕まえたあのウサギが ここ に・・!!
さすがに少年にはかなりショッキングなことであった
愛くるしいウサギが肉になって我が家の食卓に上っていること
そして俺たちが捕まえさえしなかったら こうならない可能性もあったこと
あの捕まえたときのウサギの温もりがまだ残っているというのに・・

少年は誰しも多感で傷つきやすい
私は食欲を失い 食卓を泣きながら去っていった・・

などというドラマチックなことはまったくなく
当然ショックはショックだが食欲がそれを断然上回った
だいたい こんなことは昔はしょっちゅうであった
ちょっと前まで“お乳”を飲ませてもらっていたヤギが
煮物の中に入っていたり(臭いし不味いし食えたもんではなかった)
近くの農家の軒先を元気に駆け回っていたニワトリがいなくなると
我が家の夕飯は親子丼になっていた
食糧事情の悪さもあるが この程度は別に日常茶飯事だった

えっ 味?
肉といっても 豚のバラ肉くらいしか食べたことがなかったので
当時の自分としては判定のしようがないのであったが
まあ まずくはないが うまいもんでもない って感じ
食感としては “硬めのレバー”みたいな感じだった

こういう感覚“草食系の男子”にはわかるまい
わからんでえーの
こんなとこに 中高年の強さがあるんやでー




2009.12.22:tnw

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