FPのひとりごと
▼トラウマC
その街は
古めの商店街を形成していた
古めといっても一時代前の古さだった
開発から取り残された一画 が正確かもしれない
下町の風情があるわけでもなく
ただ旧くて貧乏くさい街だった
当時はもちろんコンビニなどない時代
近くの酒屋で 酒とツマミを買ってくるのが唯一の楽しみだった
いやいや もう一つだけあった 楽しみが
海が 港がすぐそばにあった
外国船やら遊覧船やらタンカーやらが停泊する港だ
時間があるときは いつも海を見ていた
1日見ていても全然飽きなかった
夜になると 停泊している小型船に乗り込んだ
(これ正確にいえば犯罪なんでしょうが・・)
このままこの船で出港したいと何度も思った
ここでの時間がこの時の唯一の“オアシス”だった
ここがなければ 人格が壊れていたかもしれない
あの時の漠たる不安 閉塞感 圧迫感 は
未熟で青臭かった当時の“僕”には強烈だった
自分は“なんなのか”を完全に見失っていた
学生でもなければ 社会人でもない
周りに知合いが誰もいない貧民屈で
とりあえず生きているだけという存在
存在意義のない人間とはこんなにも空虚なのかと
いやというほど思い知らされた
2009.12.01:tnw
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