FPのひとりごと

▼貧乏の楽しみC

学生時代 最初に住んだアパートは
風呂 トイレ 台所が共用だった
風呂なんか酷いもんで
家庭にあるのと同じような風呂に
1日に20人弱が入るのだった
公平にローテーションを組んでもらっていたが
運悪く最後のほうに当たってしまうと
風呂というより“泥水”に入ってるようなもんだった

私の部屋は台所のとなりであった
包丁の音や鍋の煮える音や“におい”までもが
かなり薄い壁越しにやってくるのであった
男の料理はどれもろくなもんがなかったが
女性陣の料理はどれも我が食欲をかきたてた
女性が台所に入って料理を始めると
五感特に聴覚と嗅覚を研ぎ澄ました
達人の域に達していた私は彼女が何を料理しているのか
ほぼ100%の確率で当てることができた
誰がだいたい何時ごろに台所に来るのかを熟知していた私は
当日の“ターゲット”をまず決めておいた
ターゲットの彼女が料理をする時間に合わせ飯だけは炊いておいた
そして献立のリサーチがすむと次なる作戦に出た
なにげなく台所に赴き

『あっ 肉じゃがだ うまそう!!』

また来あがったなと思いつつも 優しい彼女達は

『お皿もっといで!』と言ってくれるのであった

『ハー−イ』といってきびすを返し

1.5人前ぐらいをありがたくいただくのであった

後でお聞きしたら彼女達の中でも
“欠食児童用”のローテーションを組んでたんだと言われた
彼女達のご好意がなければ餓死はないにしろ
確実に栄養失調にはなっていたであろうから
彼女達は私の命の人だ おおげさではなく
今の時代には考えられないことで ありがたいことだった




2009.08.05:tnw

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