FPのひとりごと

▼さらばアメリカ−ヤンキ−の憂愁F

彼は 短い沈黙を終えて
一気に 堰を切ったように話しはじめました
なにかにとり憑かれたような感じでした

それまでは 私にもわかるように
ゆっくりと ていねいに話してくれてたのに
急に “本物の”英語を話しはじめました
それは 私に向かって話してるのではなく
自分自身に話し掛けてるようにも見えました

それまででさえ 3〜4割しか理解してないのに
ぶわーっと英語をしゃべられたんじゃ
こっちは もうお手上げの状態です
でも なんとなくではありますが
彼の言いたいこと というより“魂の叫び”は
頭ではなく ハートで理解できました

彼は 米国海兵隊であることに誇りを持っていましたが
それが いま かなり揺らいでいるのでした
彼は 志願してアフガンに来ました
それは テロとの戦いを制して 彼の地に平和をもたらし
アメリカ国民の安全を確保することにより
世界の平和を維持することに寄与すると信じていたからです
ところが
現地に入って 米軍がいかに“招かれざる客”であるかを
というより 憎悪の対象であったかを知ってしまったようです

彼は 何度も 『Why?』と言いました
そして そのたびに 苛立っては バーボンをあおりました
観光気分でやってきた私には かける言葉もありません

彼の目から 一筋のの涙が零れ落ちました

通りすがりの日本の観光客なのに・・・
私も なぜか 泣いてしまいました
なにか元気付けることでも言ってやろうと思いましたが
言葉が まったく見つかりませんでした

そうこうしているうちに
“一戦”終えた連中が どやどやと降りてきました
彼は『聞いてくれて ありがとう』と言って
あっという間に 仲間と消えていきました
当時 まだ アメリカと言う国は自信満々でした
自国の圧倒的な軍事力でできないことは無いと信じていました
でも
良心的な一人の若い海兵隊員は 気付いていました
アメリカの傲慢 と 正義のない戦いに

それから数年後 9.11が起こりました

                       (つづく)

2008.12.20:tnw

HOME

copyright/tnw

powered by samidare