なあまずノート
▼(49)『昭和、あの日あの味』
月刊『望星』編集部編 新潮文庫
東海大学出版会から、単行本として発行された本が文庫化されたもの。
『望星』に「あの日あの味」というタイトルで連載された、各分野の著名な方々のエッセイ集。
文庫化に当たっては、戦前・戦中、敗戦後の復興期、高度成長期前後、昭和40年代以降、というようにその時代ごとにまとめてある。それに、世界の食の異文化にふれたエッセイを加えている。
いつ、どこで、だれと、どんな状況で食べたか。
同じ食べ物を食べたとしても、美味しさとか喜びとか、全然違うものになるにちがいない。
それは体験的に解るような気がする。
「空腹こそ最大のご馳走」なんて、その通りなんだけど、この一言では片付けられないこともあるように思える。
昭和47年、私が小学5年生の時祖父が亡くなった。
肉と卵を一切食べない主義を通していた祖父に倣って、我が家では祖母や両親、姉も私もそうしていた。
ただし、小学校に入ってからは、給食はいただいていた。
祖父が亡くなって、父親がお寺の住職になってからは、「なんでもいただこう」ということになった。
それは、この時代の食生活が変わったことが一番の理由であったろうと思われる。
また、私があまりにも身体が弱く、小学校時代の多くを入退院と自宅療養に費やしていたからだ、
このエッセイ集を読むと、食の移り変わりということを感じさせられる。
アメリカなどの外国から入ってきた食への憧れとか、それに触れた喜びもある。
現代では、昔の日本の食生活こそ理想的ではないか、とも言われている。
でも、きっとほかに多くの食べ物があるからこそそう言えるのだろうとも思える。
戦争によって大きく翻弄された昭和という時代の食。
懐かしさとともに、食べる喜びという点で、グルメなど及びもつかぬ一種の羨ましさも感じたのでした。
画像 (小 中 大)
2010.10.07:あら
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