なあまずノート

▼力持ち三十郎のお話

田沢の人に伝わるお話で、大荒山不動尊の霊験記としても語られているお話です。



 昔、田沢の白夫平に三十郎という子が生まれました。
 生まれつき体が弱かったので、心配した祖母はこっそり大荒山の不動明王に二十一日間の丑の刻参りの願をかけたのだそうです。

 ところが、結願の日を待たずに病気になってしまいます。
 病床に三十郎を呼んで「満願の日までの丑の刻参りを自分に代わって続けよ」と言い、無言の行を誓ったのだから、「どんなことがあっても言葉を発してはならぬ」と教えました。

 三十郎は丑の刻参りをし、いよいよ満願の夜、不動明王の前で手を合わせていると、お堂の扉が開いて不動明王が姿を現し、「これ、三十郎」と声をかける。
 咄嗟のことに三十郎は慌てて「はい」と返事をしてしまいます。

 これは「無言の行」の約束を破ったことになり、不動明王は持っていた剣で三十郎を突く。
 剣が歯に当たって三十郎の前歯が一本欠けたといいます。
 しかし、それを我慢している三十郎を見て不動明王は哀れに思い、三人力のチカラを与えようと思っていたところを、それもできないと、その半分の一人半の力を三十郎に与えたと言うことです。



 この話は、武田正さんが要旨をまとめたものからの抜粋です。
 三十郎にまつわる逸話は多く残っておりますが、またの機会にご紹介したいと思います。

 

 
2009.06.04:あら

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